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「#幼馴染」のBL小説を読む
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新しい なかまが ふえたよ!


前世の記憶持ち審神者が在する当本丸には現在、獅子王、小狐丸、そして御手杵の三振りしか刀剣が在籍していない。

その理由は審神者の性格に因ったもので、疑問を呈した刀たちに説明する審神者の表情は至って真剣そのものであった。

「他の本丸には40近くも刀剣がいるらしいけど、俺には無理だ。甲斐性ない男だし、正直40振り全員と分け隔てなく接せられるかってーと、自信が無い。それにほら俺、面倒臭い性格してるだろ?………おう、ここで誰も頷かなかった事に嬉し泣きを禁じえない。手拭いサンキュー、獅子王。で、歴史修正主義者達と戦うことを放棄するワケじゃあねえけど、矢鱈に刀剣の数を増やして一振り一振りを省みてやれなかったら、人間のために力を貸してくれてる神様たちに申し訳が立たない。そこで、今回で鍛刀するのを最後にする!!」


審神者の最後の宣言を聞いた三振りは驚嘆するでもなく、
「主が決めたんなら、俺は何の文句もねえぜ!」
「ぬしさまのブラッシングがあるだけでこの小狐、一騎当千の働きをご覧にいれましょうぞ」
「え〜…?本当にそんな感じで行くのかぁ?まあ、俺も頑張るけどよぉ……刺す事しか出来ないぞ?」

不満に感じたり苦言を呈する刀剣はいない。納得できているかは別として、主たる審神者が言うのであれば、余程の事では無い限り刀は主に従うのが性である。

だがしかし、少数精鋭と言えば聞こえは良いが、現実がそう甘く無いことも分かっている。せめて規定として定められている第一部隊の六振り分は確保したい。

「そう言うわけで、これから三振り分鍛刀して行くわけだが…どうする?どの辺の刀がいた方がいいんだ?」

「やはり夜目が利き、小回りが利く短刀がよいのでは?」
「俺はやっぱ大太刀ってカッケーなーって思う!だから大太刀!」
「どうせだったら脇差がいいなぁ俺は」

狙って呼び出せるのであれば、他の審神者も苦労はしていないのだろう。
「あまり期待しないように」と言い置いて、審神者は刀匠と共に鍛冶場へと入って行った。


「なあ、誰が来ると思う?」
「本心に言えば、誰でも良いところじゃ。ぬしさまの寵愛を一身に受けぬ刀であればな」
「相変わらず小狐丸の愛は重いなぁ…」


審神者が鍛冶場から戻って来る前に、一仕事終わらせておこう。三振りはそれぞれに課せられた内番に向かう。
今日は御手杵が夕餉を作る番だった。
またおでんで良いかな、と考えつつ、今日で刀の数が増えれば、飯の時間も賑やかになるだろう。あれで寂しがりやで、賑やかな物好きの主は刀の数が増えること自体には喜んでいるのかも知れないなと思った。




ー ー ー




「そう言うわけで、ハイ。右から順に、三振りに自己紹介してくれ」


「あ、あの…ご、ごこ、五虎退、って言います…っ! よ、よろ、しく、おねがい、します!」
「石切丸と言う。どうぞよろしくお願いするよ」
「はい拍手〜」

「うおおお!マジで大太刀来てんじゃん!主やるなー!」
「な、なあ獅子王!俺の隣で猛烈な音立てながら拍手してる小狐丸の顔がヤッベェことになってんだけど!」
「ん?本当だ。何でだ?」


小狐丸の目線の先にはオドオドとした様子で彼からの視線を受け止めている半泣きの五虎退がいる。小狐丸が五虎退に対し決して負けはせんぞ、と意思を固く持っている事など知る由も無い審神者は「皆んな仲良くするようになー」そう言って二振りを本丸へ案内しようと動いた矢先、御手杵が制止をかける。


「あれっ? な、なあ、脇差は?あともう一本鍛刀するんじゃなかったのか?二振りしかいないけど?」
「刀匠に渡す依頼札がもう残ってないことに後になって気付いた」
「…あ、あぁ〜まあそりゃそうだよなぁ〜」


知ってた。資材の管理が杜撰なところがあるのだこの審神者は。


「……ええい、そこな虎の子!いつまでそうしてぬしさまのお手を甘受しておるのじゃ!そろそろ私に代わらんか!」
「ふえぇ…」
「おーい小狐丸ー。新刀いじめヨクナイぞーじっちゃんのご満悦な顔見てみろー」
「ぐぬぬ…」


「それで、私はまず何をすればいいのかな?ここに漂っている不浄の気を払えばいいのかい?」
「や、それはしなくてもヘーキだけど」


やはり適度に本丸の人口密度が増えるのは良いことだ。
審神者のご満悦な表情とはそう言った意味合いが強かった。
あと、審神者は思った。


「うちの本丸、やけに銘が三文字の刀が多いな……なんかのフラグか?」



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