「即戦力を求めてるんだよね、うちって。お前はどうなんだ? 働ける? 獅子王と俺の三人で畑仕事と馬の世話を24時間こなせる?」
「……何やら黒い企業の面接を思わせる発言ですね、ぬしさま…」
獅子王との朝の水遣りを終え、四時間の鍛刀の末に現れた付喪神はどうにもモフモフとしている。獅子王もあれでモフモフしているので、まさか付喪神にはこんな奴らしかいないのかと思ってしまうほどだ。
白く、背の高い大きなモフモフは、自らの名を「小狐丸」だと名乗った。一見軽薄そうに見えたが、「え、今この屋敷には私を含め二人しか刀がおらぬと?であるならばこの小狐、ぬしさまに張り切ってお仕えいたしましょう」なんて初っ端から俺の好感度メーターは吹っ切れた。こいつ、使えるやつだ。
「おっしゃ、おっしゃ!俺たちの屋敷にも光明が見えてきたな!それで、小狐丸は何が得意なn
「その前にぬしさま、お一つよろしいでしょうか?」
「ん? なんだ?」
「私の毛を梳いてはくれませぬか?」
「やめろ……昔実家で買ってたラブラドールのラブちゃんのこと思い返すから……ブラッシングとかさせんな……うぅぅラブちゃぁあん……小狐丸の髪の毛サラッサラだな……」
「獅子王 ぬしさまは何を仰られているのです?」
「あー気にしないでいいぜ。たまによく分かんねぇ単語を使うんだ主は」
思わぬ伏兵だった。小狐丸の毛並み(毛並み?)が前世飼っていたラブちゃんそっくりだった。指の間をするりと落ちて行くのに、掌に残る温かいふわっとした感触……まさしく獣の毛みたいなんだがそれを何故髪の毛に仕込ませている小狐丸。最高に気持ちがいい毛艶だぞなんだこれ。
「………小狐丸」
「はい、なんでしょう ぬしさま」
「これから毎晩俺の布団で一緒に寝てくれ」
「出会って数刻で夜伽のお誘いですか…!?」
「いや違う。普通に抱いて寝かせてくれればいいんだ。モフモフしたいさせて」
「はぁ………」
「なんだよ二人だけ、ズルイぞー!俺も主と同じ部屋で寝る!川の字で寝ようぜ!俺が真ん中な!」
「おおいいなそれ…!若い頃を思い出す」
「構いませんが…獅子王が真ん中となると、私がぬしさまと同衾出来ないのでは?」
「同衾言うな。でも確かにそりゃそうだ。じゃあ俺が真ん中になるから左右から二人で俺を挟みこむ感じで寝よう」
「それもいいなー!」
「……ふふ、」
なにやら私も柄にもなく、楽しい気分になってまいりました。
と小狐丸が笑う。その笑った顔もラブちゃんにそっくりだった。
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