とうらぶ | ナノ
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どうしようもない


学校帰りに居眠り運転してたトラックに轢かれて、起きたらなんか神さまの使いになってた。俺、絶賛赤ん坊なんだけど。周りにいるじじいどもが「ついに奇跡が」「この子こそ世の命運を別つさだめの子!」持て囃されてばっかりってどういうことだ、夢なら覚めろ。この装束動き辛いし。神様とかなんだよ知らねーし!受験祈願したとき聞き入れてくれなかった神様の言葉なんぞ聞きたくねー!そうこうしてる間にもじじいどもが何かしてる。祈祷じゃ、とか言ってる、うわっ冷や水かけてきた!なんだこれ寒い!次は安置所?とかなんとか言うところに運ばれ……うわああああああやめろおおおおお俺暗いところ無理なんだってええええええ!!!









とまあそんな感じで色々なんやかんやあって、子どもの頃からやけに人生達観してたくそ可愛くない餓鬼は大きくなって今じゃ人間になる刀の面倒を看てます。人生何が起きるか分からんね、まったく。




「あぁるぅじぃ〜…俺もう畑仕事したくねぇ〜…ひと狩りしに行こうぜ〜」
「そんなモンハンしたくなるような事を口にするな。現代に帰りたくなるわ」
「もんはん?蒙古斑の略称か?」
「まあ喋ってないで手ぇ動かせ、手。今この屋敷には俺とお前しかいないから畑の手入れも俺らでやるしかないだろ」

太陽の光を浴びる金髪が眩しいこのやたらめったモサモサした感じの服を身に着けている少年の名前……と言うより通称は「獅子王」。俺が審神者として初めて生み出した、最初の付喪神だ。
若い奴なのでさぞ手を焼かされるんだろうと思っていたが、気持ちのいい奴だったので上手く付き合えていると思う。ただ、畑仕事に従事するときの態度はいつもこんな感じだった。鍬を振るう回数よりもぼやく回数の方が多い。


「刀鍛治みたいな男もいたじゃん、あいつは?」
「あの人は日雇いのバイトさんみたいなもんだからもう帰ったよ」
「ばいと? 主はたまに理解出来ない言葉使うよなー。 あーめんどくせぇ〜」


可愛くない子どもだった俺も今じゃ一児の父親みたいな立場にあるんだから不思議だ。いや俺はまだ若い。おそらく若い方だ。なので獅子王の不遜な言動にもちょっとむかっ腹に来る時がある。ちょうど今みたいなときに。


「…そうか…じゃあ今日の夕餉はお前の分のおかずは作らないからな」
「なにっ!?おいおいちょっと待てよ主!そりゃないって!」
「なら働け!働かざるもの食うべからずって、ありがたーい教えがあるだろうが!」
「うう、わかったよ。焼き魚食いたいし…」
「俺もビーフシチューとかハヤシライスが鍋一杯食いてぇ」
「びぃふしちゅぅ?林らいす?」



……でも、待てよ?俺って審神者なんだよな?
獅子王みたいな付喪神たちを神様パワーで過去に送り届けて歴史改竄を目論む奴らをボッコするんだよな? じゃあその力を応用して、2000年代に行くことって出来ないのか?

…ああでもきっと無理だ。
神様の力ってのは、"自分ではない者"の為だけに効力がある、だから己の利益のために用いたり悪用は出来ないって、じじいどもが言ってた気がする。仮に現代に行けるとすれば俺ではなく、獅子王だろう。


「……獅子王が現代にいたら間違いなくジャニーズ入りできるな…でも刀でも事務所とか入れんのかな…」
「邪似頭? なんだそれ、新種の妖怪か? つか!主こそ手が止まってるぜ!」
「あー、はいはい」


ほんと獅子王見てると時代錯誤に陥るわ。
あー現代で生きて〜 血腥いの嫌だよ〜 モンハンしてぇ〜




「そう言えば主。さっき鍛刀してたよな?そいつまだ出来上がらねぇのか?」
「刀匠が言うには、完成までざっと4時間かかるらしい」
「4時間?長ぇな!どんな奴が来るんだろうな?」
「とりあえず、畑仕事や馬の世話を進んで手伝ってくれる若くて体力のある奴がいいな」
「お〜そうなれば俺もちっとは楽チンでき…」
「ないぞ」
「ちぇっ」


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