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乱藤四郎


これ設定

―――


「三日ぶりに本丸に帰って来たってのに、ちょうど主さんが"しゅうがくりょこう"に出かけただなんて聞いてなーい!!」


相変わらず艶のあるピンクブロンドの髪を振り乱しながら、乱は吠えていた。

時の政府が新しく開示した新しい「刀剣男士の強さ」の解放――「極」と呼ばれる新しい形態の、最初の被検体として抜擢されたのが、長くから当本丸の支えであった乱であり、三日間の修行の旅を終えて本丸に帰還したのが、ちょうど先ほどのことだった。

装いも新たに、纏う霊力も格段に強さと輝きを増しており、一目見て力をつけているのが分かる。
乱の帰りを出迎えた他の刀たちは口々に「羨ましい」や「よかったな」や「今後もより一層主のために尽力しろ」と言って彼を労ったが、
何よりも大事な主本人が不在であると知った時の乱の落胆ぶりは尋常ではなかったのだ。


「大将も残念がってたんだぞ乱〜」
「そうだ。主殿は最後まで、帰ってくる乱のことを頼むと言っていたよ」
「むぅ〜〜〜………」


厚や一期一振から出立前の主の言動を聞いても、乱の心と不満は晴れなかった。

すぐに見てもらいたかったわけではない。でも、早く褒めてほしかった。
「頑張ったな」と。「これからも頼む」とかでもいい。「可愛い」と言ってもらえれば御の字だ。
口下手な主のことだから、それはないかも知れないが。


「うぅう〜〜………どうして人間は、僕の主さんを旅行に連れて行っちゃうんだよぉ〜。返して僕の主さん〜」



「……いや、乱の主じゃないだろ…」
「厚、しっ」
「いやだって一兄……」


「ねえ一兄! 主さんはいつ帰ってくるの!?」

「え、ああ、今日の夕方だと聞いているけど」


「――えっ!今日の夕方!? 何それすぐじゃないか!! 可愛くお化粧して、服の皺も無くしとかなくちゃ、それとそれと、新しい髪飾り……!」


机に突っ伏して不貞腐れていたかと思えば、急に起き上がり慌しく動き始めた。

以前、主におねだりをして買ってもらっていた大きな鏡――姿見?の前で、自分の姿を確認し、髪の毛を触り、髪飾りの位置を整え出す。
大きな酒瓶を持った次郎太刀が廊下を通りかかるとその腕を掴んで引き止め、何やら化粧をしてだのどうこう言っている。



「……あー、なんか懐かしいな乱のあの感じ」
「…そうだね。強くなって帰って来たけど、本質は同じみたいだ」
「ああ、本当にな。乱が修行に行った後の主のした行動とか、教えてやりたいぜ」
「ふふ……乱がいなくて酷く落ち着かない様子だったな、主殿」
「大将のあのウロウロ動き、可笑しかったな〜」


慌てる弟の様子を見ながら、二人はケラケラと談笑をする。

もうすぐ主が帰ってくる。
乱を見て、一体主がどんな反応を見せるのかと。俄かに楽しみに思いながら。



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