「いやはや、残念だったね主 新しい刀がやって来るのを あんなに楽しみにしていたのに」
「まあな」
「かく言う僕もね、弟の………えーと、膝小僧と一緒に、僕らより新しい刀が来たらぼく達が先輩になるから、しっかりと本丸での過ごし方を教えてあげたいねと話していたんだよ」
「膝丸な」
「ほら、たまには僕だって"先輩風"というものを吹かしてみたくなってね。本丸を紹介する内容を、膝掛けも綺麗にまとめてみせると張り切っていたし……」
「膝丸な」
「――にしても、主はそこまで残念そうではないね? やっぱり、僕がいるからかな? 主も一緒に、源氏万歳するかい?」
「うん、まあそうだな間違っちゃない」
「おやおや、本当かい? 冗談のつもりだったけれど、主にそう面と向かって言われると照れてしまうよ」
「 なあ、髭切。お前そろそろ自分で爪切れるようにならないか?」
「うん?なぜ?」
「何故って、こうやって俺がお前の爪代わりに切ってやってるの、なんかおかしい気がするんだけど」
「そうかなぁ。僕は、主にこうして手を取られていると体のこの辺りがほんわかとするんだ。炬燵の暖かさと相俟って、気持ちがいいなぁ」
「……爪切って、お前と名前が似ているな」
「やや、本当だね。 君がそう名乗ってみてはどうだい?僕と揃いのようじゃないか」
「遠慮しとく。 ほら、両手終わったぞ」
「うん、残念。 ありがとう、主。また伸びてきたら頼むね」
「はいはい、分かったよ。ほら、午後からお前は何があるんだった?」
「弟と一緒に畑作業だね。 ――よっこいしょ、と」
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