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乱藤四郎


/男子高校生下位審神者




「ボクの方が、ぜーったい可愛いのに!」


ストロベリーブロンドの髪を振り乱しながら卓上に突っ伏した乱は、審神者である主に今日告白をしたという人間の少女を想像上に浮かべて不満たっぷりにそう言った。現在、主は通っている"高校"から帰宅し、汗を流すため風呂に行っている。主の学校生活の内容をいつも聞きたがる短刀たちに、「そう言えば今日同じ学年の女子に告白された」と伝えただけで、主は事の内容に対して淡白な様子を見せた。色めきたった他の刀たちや、憤っている乱の方が余程反応を示しているほどだ。
 話を聞いていた一期と厚が、
「主が他の者たちに慕われていることは素直に喜ばしいことではないか」
「おう!大将がモテてんのはこっちも嬉しくなるよな!」
と話し合っていたのを耳に挟み、そして乱が口にしたのが冒頭の言葉。その内容に一期は思わず苦笑をし、厚は胡乱な目で兄弟を見やった。

「お前の方が可愛いとか、そんなの分かんねーだろ」
「いーや、絶対にボクの方が可愛い。主とお似合いなのはボクだもん」
「だからその自信はどっから…」
「はは 乱は主のことになると強情になるな」

まったく、二人とも全然分かってない。乱は心の内で不満を漏らし、ぶうと頬を膨らませる。

 二人よりも永くから本丸にあり、主を支えてきた刀の内の一振りとして、傍で主のことを見てきた乱は主のことをとても好いている。

 一期よりも頭一つ分背の高い、長身なところが素敵だ
 形の整った意思の強さを表す眉と、キリッと真摯な眼が素敵だ
 たまに笑う時に、それが細められ柔らかくなったところが素敵だ
 誉を得た時、無骨な手が優しく頭を撫でてくれるところが素敵だ
 耳に心地好い落ち着いた低い声が名前を呼んでくれるところが素敵だ
 学業と審神者業を両立させる為に日夜研鑽に励んでいるところが素敵だ
 乱の言う我侭にやれやれと呆れながらも応えてくれるところが素敵だ
 これら全ての「素敵」をひっくるめて、乱は主が「大好き」だ

そんじょそこらの人間の女には負ける要素なんかないと乱は思っている。自分は可愛い上に愛嬌があり、主を護れる強さも兼ね備えている。人間の男女は二人で「デート」とやらをするらしいが、そのデート中、不意に素行軍が襲ってきでもしたら、人間の女では主を護れないだろう。けれど乱にはそれが出来る。

「文句の付け所なくない?」
「ハァ〜?」
「ま、まあ落ち着きなさい二人とも。乱も、どうやら主は申し出をお断りしたようだし、あまり人間に目くじらを立てるものじゃないぞ」
「む〜〜〜…」

またぶうたれた乱を見て、一期は笑った。理由や動機が何であれ、弟が主を慕っている様子を見るのは楽しくある。実際に乱が主と結ばれることがあるか、あった場合どうするかなどは目下思考の範疇外だが、いじらしい片思いではないかと見守るつもりでいた。


「…まぁイイもん。だってボク、主と手を繋いだこともあるしー、膝枕してあげたことだってあるしー、主のお布団に潜り込んだこともあるしー、ナイショで主の唇奪っちゃったことだってあるから、ボクの方が一枚も二枚も上手だもん」








「主殿……?」

「わー!待てまて一兄!乱の話ちゃんとよく噛み砕けって!主は乱になんの狼藉も働いてないだろ一兄ー!」








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