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「#幼馴染」のBL小説を読む
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宗三左文字


/少し怒りんぼな審神者




やれやれまったく、なにが「籠の鳥」だ。
そんな大人しく収まるようなタマなんかじゃない。彼奴は間違いなく「気まぐれな猫」ではないか。




「やあ主 どうしたんだい、やけにプリプリ怒っちゃって」

「宗三がなぁ!」

「ああ、はいはい また"いつもの"だね」


俺のたった一言で全てを察した勘のいい青江は「居間で聞いてあげるね」と俺の肩を押して連行する。肩を掴む手つきが妙にやらしいのは気のせいじゃない、確信犯だ。けどそんな、事案確定みたいなことはどうでもいい。おれは さっきから怒ってんだよぉ!


「それで、どうしたんだい?」
「さっき鍛刀場に寄ったら宗三左文字がいたんだ」
「おめでとう、これで記録をまた更新したんだね」


パチパチパチ 青江の拍手が乾いた音を立てていることにも腹が立った俺は「やめい!」と言ってそれをやめさせる。
記録更新 うちの本丸にやって来た宗三左文字の数が、今日の鍛刀で累計二百十一振りになったということだ。おめでたくも何ともない。何故なら二百十一振り目ということは、すでに一振目の宗三がいるというわけで

「新参宗三を見た近侍宗三がこうだ!『おやおや、また鳥が増えたようですねぇ。いつものように刀解ですか?それとも、僕の代わりに彼を侍らせるとか?』いっっつもこれだ鬱陶しい!!」
「主は尻軽じゃないのにねぇ」
「その言い方は腹立つがそうだ!なんで今いる宗三を放って新しい奴を侍らせるなんて思う!それを毎回聞いてくるんだ!ああ、面倒くさい!」
「返って来る答えを分かりきってるから、あえて訊いて確かめたくなっちゃうんじゃない? 主に大事にされてるってことを実感したいんだよ、きっとね」


そんなことも重々承知している。一体どれだけの月日、あいつの「宗三節」を聞いて来ていると思っているんだ。もし俺の耳が自我を持っていたら「もう宗三左文字の鬱を聞きたくないです」とストライキを起こして俺の耳をやめていたかもしれない。


「 そんで俺が新しい宗三を刀解して『ほら分かったろ!これからもお前が最初で最後の宗三だ!』って言ってやったら『ヘーソウデスカ』って顔背けやがんだ!無視って!無視ってどういうこったよ!アレぇ!」
「主にニヤけた顔を見られたくないからだよ」
「はぁ?…………………はああ?」
「やだなぁ僕の胸なんか掴んでどうしようって言うんだい?」
「胸じゃなくて、胸倉な!」
「主はそろそろ宗三クンの"鬱デレ"を理解すべきだと思うなぁ」



鬱デレ:とは








「……おや 二人で喧しく騒いでると思えば、刀に狼藉ですか? やはりアナタも僕らをそのように扱う下劣な…」


「ほら主 宗三クンが『青江じゃなくて僕に構いなさい』と言っているよ」
「すまん、付喪神語で喋んねぇで人間の俺にも分かる言語使ってくれるか!?」


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