とうらぶ | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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鶴丸国永※


!刀剣破壊注意








俺は今自室で悔やんでいた。先ほど、出陣隊の隊長を勤めた蛍丸が泣きじゃくった顔で「ごめんなさい隊長だったのに守れなかった」と報告をしてきた。差し出した小さな掌には破片になるまで折れた元は一本の刀だったものが在った。これが鶴丸だと言うらしい。馬鹿な。あいつは刀だが人の姿をしていた。白く穢れなく美しい、そんなあいつが、こんなボロボロに壊れた刀であるはずがない。蛍丸は更に涙声になった。ああ違う、お前を責めているんじゃないんだただ現実が受け止めきれないだけなのだ。冗談だろ、とも思った。鶴丸は強い。送り出した時の鶴丸の力量ならば、厚樫山なんぞの敵如きに遅れを取ることはなかったろうに。 そうだ、それに「俺はあいつに御守りを渡していたんだぞ」蛍丸はぎょっとした。「そんなの、鶴丸、持ってなかった」 まさか。「鶴丸は今にもぽっきりと折れていなくなってしまいそうだから持っておけ」「ははは、主は意外に心配性か? まあ、貰えるのなら貰っておくがな」そうやりとりを交わしたのはいつだったか。蛍丸はより一層暗い顔をする。いつも皆の先頭に立ち、率いる頼もしい姿は微塵も感じられなかった。酷く心がいたい。眩暈もする。刀剣たちが折れたという報を聞いたのは、今日が初めてなのだ。想像していた以上に辛い。「なぜ、」御守りは、どこに 「!」「あ! 主さま、どこ行くの」 鶴丸の部屋だ。とは言っても他の刀たちも使っている大部屋だが、壁際の隅にある文机に近付く。簡素な机上には、使われていない真新しい紙と筆。新品の明かり。そして…… 「…これは…」引き出しから、出てきたのは、「……どうして、持ち歩かなかったんだ。肌身離さず持っていろと、言っただろう…」"真新しい"御守り。擦れ一つないそれは、とても大切そうに、白い包み紙で何重にも包まれていた。






















おい、莫迦者。これに触れるんじゃない。これは俺が主から賜ったものだぞ。どうだ、嫉妬に咽び泣きそうか?ははは、だが悪いがやらんぞ。む?ああ勿論これが何であるかは分かっている。"御守り"、と言うんだろう?はは、名称からして嬉しくなるな。刀である俺なんぞに御守りだとさ。まったく、驚き通り越して嬉しさしか感じないな。…いやいや、戦場へ持ち歩くわけないだろう。愛しい者から貰った物だぞ、血なぞ付けてたまるものか。 これはずっとここへ置いておく。そしていつも無傷で帰り、俺の無傷な姿をこの御守りに――主に見せてやるんだ。

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