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にっかり青江


主である審神者は、微笑みの絶えない美しい女性だ。
見た目や顔が特段整っている、と言った意味での「美しい」ではなく、浮かべたその微笑が、時に陽の光のように見える時があるのでそう証した。自他共に、夜が似合う男だと認めている青江には眩しすぎるくらいだった。

思えば彼女は、初対面の時も青江を見て笑っていた。
「――こんにちは、にっかり青江さん」
鍛刀で霊力を多量に消耗した、疲労の濃いその笑みがとても好印象だったことを覚えている。何がそんなに嬉しいのか、しきりに「にっかり青江」「にっかり青江」と口ずさんでいる。可愛いらしい子。

よく働き、よく気付き、よく笑う。
他の刀剣たちも口を揃えて「良い主に巡り合えたな」と言った。青江もそう思っている。
この主での元なら、昔のように、幼子や、女の幽霊を無闇やたらと斬ったりせずに済みそうだ。







「これからもずっと、僕は君の為の剣になるよ」


縁側で寛ぐ彼女にそう言った。二人きりなのをいい事に、殊更甘ったるい声を出して。睦言のようだと笑ってくれても構わない。この言葉を真摯に受け止めてくれても、照れて微笑んでくれても、どちらでも良かった。


しかし彼女は





「―――――面白いことを言うのね、青江」



 いつもと、笑い方が ちがう



「私の為の剣として、貴方は何を斬りたい?」
「人間?そうよね、斬るなら生身があるものがいいでしょうね」
「幽霊なんて、もう斬りたくないでしょう?」
「 ああどうしたの、青江 そんな顔をして」
「大丈夫よ、」



「わたし、もうあなたのこと、怨んだりしてませんからね」



――笑い方が違うだけで、人はこんなにも別人のようになってしまうのか

彼女はもう、いつものような"陽の光"を浮かべてはいなかった。
どんよりと暗い、ぬばたまのような、張り付いた笑みは、
僕を真正面に捉え、 にっかりと 笑っていた。











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・にっかりに斬られた元幽霊主がにっかりに会いたくて(意味深)審神者になったよ



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