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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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清光と安定


俺に罪は無かった、とだけ言っておこう。
落ち度ならばあったような気はするが、だとしても今の俺のこの処遇が過保護すぎて落ち着かない。





「もっと温かくしとかないで平気?」
「毛布もう三枚持ってくる?」
「林檎取って来たんだ、擦ろうか?」
「熱めのお湯、枕元に置いとくね」
「寒くない?換気はもうこの程度でいいんじゃない」
「ねぇほんとのほんとに大丈夫なの主さま」
「苦しくない?あのさ、何でも言ってね?」
「やってほしい事とかある?」
「何でも言ってよ」
「ねえ」
「ねぇ」
「ねぇ」
「ねえ」



「そっとしといてくれ……」


「やだ!」
「やだぁ!!」



泣きながら水に濡らされた手拭をぶつけられる。思わず「ぐふっ」とくぐもった声を上げると、清光がすかさず安定に「あー!?お前なにやってんだよ優しくしてよ!!主さまは今生きるか死ぬかの瀬戸際なんだよ!?」 なんて言っているが、そんな事はない。
薬研の見立てによると、これはただの夏風邪。熱く寝苦しい夜が続いた為に、俺がうっかり薄着で寝てしまったことで引いた、本当にただの何でもない風邪なのである。
朝起きて真っ先に気が付いた。風邪引いたな、と。それでも、そんな時だってあるさ人間だもの。と軽い気持ちで痛んだ喉で咳をすれば、いつもの様に朝起こしに来てくれていた清光が泣き出しそうな顔で部屋に転がり込んで来たのだ。


そこからがまた大変だった。
清光はとても泣きじゃくった。その様子に驚いたが、もっと驚いたのは「主さま死なないで!!」と言われた時だ。いや断じて死ぬ気もつもりも全くない。なのに清光の勢いは止まらない。一人だけでは対処出来ない事案だと察したのか、「安定ぁあー!!!」大声で仲間を呼んだ。呼んで欲しくない者であったことは明白だ。

そして以上のようなやり取り。
診察をしてくれた薬研も、主命の前に既に蜜柑を剥き、砂糖水を用意してくれた長谷部も今ここにはいない。寝かせてくれないのは清光と安定だけ。

でもそろそろ俺は眠りたい



「……あのな、二人とも…落ち着いてくれ…」
「で、でもさぁ…!」
「…、…」
「大丈夫だって……ただの風邪さ。明日にでも治ってるよ」

ようやく二人の顔から不安感が抜けそうだ。よし、あともう一押し…

「だからそっとしておい………… ッ!ゴホッ!ゲホッ、ゴフッ!ッ!」


「!?!」
「!!?」


やばい ちょっと盛大に咽てしまった   あ、あーー


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