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男には、どうしても"彼"に伝えたいことがあった。
けど、自分がその言葉と想いを口にする日はきっと来ないだろうと思っていた。
でも、こんなことになるのなら、一思いに伝えていればよかったと後悔した。
我慢して、抑え込んでみても、なにも良いことなんてありはしなかった。
結局最後だって、"彼"の泣きそうな顔を見たくなくて出た"嘘"だった。
なにが "平気だ" だったのか。
伝えたかった言葉は、そんなものではない。
最後に見たかったのは、あんな表情ではない。
ああそれに、なんだかたくさん未練がある。
たくさんやりたい事があったし、連れて行きたい場所があった。
お世話になった人たちへの感謝も、まだ返しきれていないというのに。
そう考えると、途端に終わりたくなくなった。
けれど男の体は猛スピードで落ちて行く。
落ちて、
落ちて、
落ちて、
男は無駄だろうかと考えながらも、頭を守ることにした。
脚を犠牲にしてでもと思い、そこから着水しようと試みる。
おそらくこの距離だ。幾ら男でも全身の破壊は免れないかもしれなかった。
それでもせめて、と。
男は歯を強く噛み締め、食い縛るようにして襲いくる衝撃に備える。
死にたくない。
どうしても。
どうしても。
男は、自分の骨が砕ける音を聴いた。