千年先の雨のにおいがした | ナノ
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02






旧砂漠までの道すがら、ガーグァが引っ張りアイルーが御する移動車に揺られながら、今回のクエストに関するギルドの調査書に目を通していた。
書かれていることは平常時のものとなんら変わりはない。
旧砂漠という地形に関する注意点やセルレギオスに関する、現在分かっている範疇の基本情報、今回のクエストの制限時間、ベースキャンプの位置、棲息しているモンスター、などなど。

「真新しいことは何もなさそうだな」
「そうですニャア。でも問題ないニャ!旦那さんとこのボクにこなせないクエストは無いニャ!」
「おう、頼りにしてるぜ相棒」
「ニャ!」

オトモアイルーは頼もしく胸を逸らす。あわや後ろに倒れ道端に転がり落ちるところだったのは、彼の為にも指摘せずにおろう。


空気が乾いてきた。道脇に見えていた緑の数が極端に少なくなって行く。目的の旧砂漠に、近付いている。ここからは息をするのも一苦労になる。外していた頭防具を取り付け、調査書をポーチに仕舞い、今一度愛武器の点検をしておく。その間に、ハンターの背中に回ったオトモアイルーがポーチの中身を確認してくれる。
「旦那さん、秘薬の調合分持って来なかったニャ?」
「……あ」
「まったく!忘れっぽいところはG級ハンターになっても変わらないニャア」

面目ない。何せ今回はポーチに充分な空きが出来なかったから、と言い訳をして「なら今回もボクの笛を頼りにするといいニャ!」と頼もしいお言葉を貰い返す。よしよし、と頭を撫でてやっていると、案内を勤めてくれていた御者台のアイルーが、聞き慣れた言葉を申し訳なさそうに伝えてくる。

「ハンターさん、申し訳ニャいですが案内できるのは此処までですニャ」

分かっている、いつものことだ。ガーグァたちがベースキャンプまでたどり着けないのはこの先の道に小型モンスター達が湧いている場合である。怖がりで臆病なガーグァにも、非力なアイルーに無理をさせる必要はない。
「此処でいいぞ」
ベースキャンプからは程遠いが、目的の旧砂漠には到着した。
まだクエスト開始の時間ではないので、それまでに土地勘をフル活用すれば自分の足でキャンプまで行ける。

「ご武運を祈るニャ、ハンターさん!」

挨拶を返し、去り行く後姿を見送る。砂上に出来た轍が、一瞬で風と砂によって吹き消されていっていた。




遥か頭上で輝き照り付けてくる太陽が、ハンターとオトモの全身の水分を容赦なく奪ってくる。そしてギャアギャアとガブラスが喚いている声。小高く盛り上がった幾つかの砂山からは時折砂埃を吹き上げながらザザミが顔を出す。そのザザミの頭上を、飛び越えていくデルクス………………


「……旦那さん背中がどんどん曲がっていってるニャ」
「…………あヅい……クーラードリンク飲んでるのに、…ここの暑さは半端じゃないな全く……次にクエストで来た時は……氷結晶とか、頭に当ててたい……」
「ただでさえポーチ一杯なのに駄目ニャよ! ホラ早くキャンプまで向かうニャ!」
「おう……………」


歩けども歩けども、深く、足を飲み込む砂地に手間取りながら、養った土地勘を頼りに岩場のある方を目指し、なるべく太陽に背を向けつつベースキャンプにまで辿りつく。途中デルクスの群れに出くわし、何匹か狩って保存食を調達した。珍味とされるデルクスのキモは、あまり好きではなかったが。