千年先の雨のにおいがした | ナノ
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「おい聞いたか」


取引先はきっと今頃大激怒だろう。商品をついに届けられないまま期日がやって来てしまっていた。
通行止め当初は門の前で我関せずといった顔の憲兵相手に難癖をつけたり言葉を吐き散らしていたが、さすがにもうそんなことをする気力すら浮かない、なんせ大損だと打ちひしがれていたときに、いつかのような言葉とともに、鍛治見習いが何事か情報を仕入れてきたらしい。



「これは噂なんだが、件のセルレギオスは討伐が成功したらしくて、もうそろそろ規制が解除されるらしいぞ」

「本当か!!」

「ああ。さっきそこで憲兵が話しているのを聞いたんだ」


鍛治見習いの声が聴こえてきたのか、周りにいた行商人や旅団の連中が集まってくる。


「おいなんだ、やっとかよ!」
「えらく時間を取らせてくれたわよねぇ、まったく」
「こっちは待ちくたびれてんだ!一分一秒でも早く通させろや!」
「ったく、商売上がったりだよこんなこといつもやられちゃあな」
「ハンター連中にはもっと頑張って働いて貰わないとなぁ」
「ハンターも人手が足りないって聞くしよ」
「お前もハンターになって手伝ってやったらどうだ?」
「冗談! おっかねぇモンスター連中との命のやり取りなんざ、死んだってごめんさ!」
「ワハハ!違いねぇ!」


野次馬連中の声はどんどん大きさを増していく。
そしてそんな人垣と声を割るようにして、今日まで立派に門番としての職務を全うし続けて来た憲兵が、声を大にして宣言する。



「――只今の時刻を以って、これより当関所の通行を開放する!」











深い眠りから覚めた後、現地ハンターのリーダーは自分が今どこにいるのか一瞬分からなかった。
自分を取り囲んでいる大勢の人間の数。いずれも服には見慣れたギルドの紋章。


「…………、…」

「あ、気がつかれましたか?」


リーダーの目覚めに気がついた女が傍らに駆け寄って来る。どうやら自分は、柔らかな寝台に移されていた。


「大丈夫ですか?意識はハッキリとしていますか?私はハンターズギルド医療班の者です。要請を受けて参りました。あなたは今、医療用簡易ベッドの上です。分かりますか?」
「ああ……」
「それはよかった。貴方のお仲間たちも皆さん収容済みです、ご安心ください」


女はハキハキとした口調と、テキパキとした所作で次々と薬を調合していた。
顔を少し動かして周囲を見渡すと、確かに他の仲間の二人が寝台に寝かされていて、その傍らで寄り添うようにしてガンナーがついているのが見える。よかった、みんな無事だった。


「………そうだ、……我らの団……ハンター……は」

「はい。我らの団ハンターさんですね。もちろん、筆頭ガンナー殿からの連絡にありましたので救護準備は整ってますよ。今は他の者が迎えに行っております。直に皆さんと一緒に戻って来るはずです」

「そう、か……… よかった……」

「お疲れのようですね。血は止まってましたが、血が足りてなくて眩暈がするでしょう。大人しく横になっていてくださいね」

「ああ、分かった……」



―――よかった。

現地ハンターのリーダーはほっと胸を撫で下ろした。
あれから、筆頭ハンターたちが、我らの団ハンターを見つけられたのだ。よかった。本当に。