千年先の雨のにおいがした | ナノ
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「だぁからぁ、そうじゃなくて! この薬の調合の仕方はこう! で、こっちの薬草は葉の部分より根っこを使った方が滋養効果高いッス! せっかくコレだけの道具があるのに、勿体無いッスよ! オーキューショチにも程があるよこんなの!」

「な、なるほど勉強になる」



――筆頭ルーキーとやらは、初対面時に抱いた軽薄そうな印象とは裏腹に、意外に博識であるようだ。
今もこうして、リーダーの様子を見に戻ったベースキャンプにて医療簡易道具の効率的な使用方法の教授を受けている。筆頭ルーキーが作った鎮痛剤を服用したリーダーは、先程よりも顔色が良くなっている。効率よく素材を使えばその分効果となって出てくると、そう教えられた。ついつい、状況と場合も忘れて感心してしまう。


「 おし!これでこっちのリーダーさんの『オーキューショチ・改』は完璧ッスね! さ、早いトコ残りの人らを見つけに行かないと!」
「そうですね。………申し訳ないです」
「エ? なーんで謝ってるッスか?」
「自分達がもっとしっかりと行動をしていれば、我らの団ハンター殿を助け、スムーズに任務を終えられていたかもしれないのに……」


悔やんでも悔やんでも悔やみきれない。我らの団ハンターへ抱いている畏怖の念はともかくとして、これは一ハンターである己の矜持に関わる問題と言っても過言ではなかった。

けれども、筆頭ルーキーはそうではなく。
ポカンと大きく開けた口を閉めたかと思えば、「ふーん」と気のない返事を返しただけだ。


「なんだ、そんなこと」
「……なんだ、って……そのような言い方は…!」

支給品ボックスに残っていた予備の回復薬グレートを己のポーチに収納しながら、彼はあっけらかんと答える。

「ダイジョーブッスよ。絶賛迷子になっちゃってる我らの団ハンターのことは、うちのリーダーがちゃーんと見つけてくれるッス!」

「………彼が? なぜ、そんな自信があるんですか」
「んー、自信っていうか理由ならあるッス。 うちのリーダーは、我らの団ハンターのトモダチッスからね」

「……と、友達?」
「そ、トモダチッス! しーかーもー、ただのトモダチじゃあないッス! 


永・劫・の・友・人!!


 ――どうだ! 凄いだろ!」


「…………はあ」


「あー!? なんスかそのうっすい反応ー!! 自分のリーダーとあのヒトの友情をそんな生返事一つで受け流すつもりッスかー!?それはリーダーの弟子として聞き捨てならねーッス!!」
「い、いえ決してそんなことは……! お、落ち着いて…!」


自分の返事がよくなかったせいで、ヒートアップしてしまった筆頭ルーキーを諌めるのに少し時間を食ってしまった。彼が師匠とその友人思いであることは充分伝わった。だからどうか少し抑えてほしい。彼の直情的なところは、もしかすると誰かから受け継がれてきたものなのかも知れないと、漠然とそう思った。


「 ハッ! そうだこんなところでグダってる場合じゃないんだった! ユクエフメイの二人の捜索!」
「そうですよ……。彼らを見つけた時のために、応急処置道具を幾つか持っていかなければ…」
「足りないみたいだったら行きがけに見つけた素材でパパッと追加分の薬作ってやるッスよ〜」
「あ、ありがたいことで……」


こんな状況でこんなことを言うのも憚られるが、ギャップが激しい者と接するのは疲れる。


「とりあえずベースキャンプから見て東の方から順にルート辿ってけばイイッスか?」
「ええ、まずはそれで。岩場を通って大きく迂回していくように」
「リョウカイ〜」


支給品ボックスから取った地図を広げながら、キャンプを出て行く筆頭ルーキーの背中を追う。

そしてふと、先程聞かされた、彼の言葉を思い返す。


「………"永劫の友人"か。…ならば今、さぞかし辛い思いをしているのだろうな、あちらのリーダーは」