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リオレウスとハンター主(MH4)



聳え立つ岸壁からは風化した岩肌がガラガラと音を立てながら崩れ落ちていた。ベースキャンプから遠くのエリアではガブラスのものと思われる鳴き声が聞こえる。強い突風が吹いてキャンプのテントの幌をバタバタと揺れていた。そろそろか、と腰を上げる。相変わらずギルドからの支給品の到着は遅れていた。いつもの様にそれを待たずして討伐に向かう。担いだ盾斧の重みを確かめ、歩き出す。煉瓦の間に僅かに生えた草を食むアプトノスの親子と擦れ違う。何度も見てきた光景で、アプトノス親子もすっかり警戒心を無くしていた。ぼんやりとした目で此方を見てくる親の方に「よっ」と声をかけた。友にかけるような声で言ってみたが、アプトノスは訳が分からない、と言うように一度首をぶるんと振って食事を再開する。無愛想だなあ、と笑う。少し、気分を紛らわせてくれた。自分はこれから、とても嫌な思いをすることになっている。まだ確定した感情ではなかったが、恐らく確定だ。嫌な気持ちになって、辛くなって、自分が嫌になって、何かをとても恨みたくなる気持ちになる。断言しよう。これは、嫌な仕事だ。


ガブラスの巣がある切り立った崖のマップに来る。今日も血と肉の臭いを嗅ぎつけたガブラス達がギャアギャアと声を発しながら此方を窺っている。猛然と突進してきた一匹を 背中に担いでいた盾斧を構え空中で叩き落す。ごしゃりと鈍い音がして地面に落ちて来たところにすかさず追撃を食らわす。首にめり込んだ斧の刃に悶えたガブラスは喘ぐように上に首を持ち上げた後、絶命した。剥ぎ取りはせず、そのまま放置しておく。血に飢えた他のガブラス達が渇きを潤そうと仲間をも捕食するのだから、わざわざ手を出してやる間でもない。他の群れが死肉に関心を持っている間に急いで蔦を伝い崖を上る。開けた場所に出た。下層よりも一層風が吹き荒れる。その風に乗って、声が聞こえて来た




―――ガアアアアアアアアアア!!





聞きなれすぎたその声に、咆哮に、頭が痛くなり目を閉じたくなった。しかし意識を手放している暇はない。声が聞こえて来たと言うことは、それが近くにいると言うこと(何度も足を運んだあいつの巣にあいつが)その咆哮がいつものような空を裂くような音ではなく暗く淀んだ地を這うようなものだとも気付く(その声の特徴をよく知っている。何度もそれらを討伐してきた)行かなければならない。クエストの達成は、ソレの討伐だ。盾斧を背から取り出し、瓶を補填する。準備は万全すぎるほど万全だ。行こう。行かなくては






「…よう、久しぶりだなぁレウス 前に会った時より何だか、色がおかしく、なってないか? イメチェンしたか?」



暗く淀んだ目が睨んで来る。生え揃った牙をちらつかせている口元からは、紫暗色の瘴気が零れ落ち、喉の奥で搾り出される警戒の声はいつか聞いたモノと一緒だった。
のっし、のし、静かに歩み寄って来るその足取りは(いつもみたいな軽いものじゃなく)一歩一歩こちらを仕留める為に動かされるものだ。

嫌だ嫌だと心が訴えかけている。だがそれはもう多分、望んでも叶わないだろう

友だったリオレウスは、正気を失くしている。俺のことをもう覚えていないはずだ。それ程に狂竜ウイルスの威力は絶大だ。モンスターの理性を失くさせる恐ろしいウイルス


「…それがまさか、お前にまで及んでしまうなんてなぁ」


リオレウスは吠えた。黒い残滓が辺りに飛び散る。そのあまりに狂暴な咆哮に耳を塞ぎ立ち竦んだ俺に向けて、飛び立ったリオレウスが火球を吐き付けた。



……嗚呼、やらなくては やらなくては、いけないのだ

既にウイルスに理性を溶かされたお前の炎にこちらが融かされてしまう前に











(高難度:空を覆う不穏な翼 クエスト設定/リオレウスと友情を育んでいたハンターの話)


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