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ベリオロスとギルド団員(MH4)


感覚器は全滅した。そろそろ俺の人生終了のお知らせが天から来るかもしれない頃だ。ギルドの凍土調査隊の一向から逸れた時点で既に色々終わっていたわけだが。

仕方なかった。最近は凍土の他に氷海と言う新しい極寒の地形が発見され殆どの研究者や調査隊がそちらに派遣されていた。尚も凍土の調査を推し進めていた我々だったが人員削減をされてはほとほと困ることになる。生憎相次ぐモンスター達の襲撃によりギルドの人間の数はだんだん減って来ているのが現状だった。優秀なハンターなら年々良いのが名乗りをあげて来てくれているのだが、腕の立つギルドナイトと賢い研究員がどうも集まらない。昨今のギルドを悩ます問題だった。
とにかく人員の少なさは俺がいた調査隊にも顕著に支障が出た。一人が雪崩に巻き込まれ凍土の下層に突き落とされたとしても、足元の安定しない場所で他の奴らは手を貸すことも出来ないのだ。応援を呼ぶことも出来ず、安易に追いかけようと正規のルートを離れれば、そこを大型のモンスターに襲われ全滅、なんてことも充分あり得る事態。だからもしそうなってしまえば、大体その人間は見捨てられることが専らだ。非道だ、と言われるかも知れないが、仕方ない、仕方の無いことなのだ。人間がこれからもモンスター達と上手くやりあい生き残って行く為には一人の犠牲よりも調査結果を持ち帰って、未来の為に、何万人もの人間を救う方が大切なのは分かりきられている話である。


なので、雪崩に巻き込まれ凍土の下層に落とされた俺、ナマエはこの凍てつく大地で人生のフィナーレ迎えようとしてるってわけだ。仕方ないしかたない。持っていた荷物は全て雪崩に攫われどこに落ちたか分からないし、服の中にまで侵食していた雪は解けて水となり全力で俺の体温を奪っている。フラフラと一応歩いてはみるが当てもないし此処が何処だかも分からないのでこの歩みにも意味はない。あ、ガウシカの群れ発見。草食ってやがるぞあいつら…。だがここで不用意に近付いちゃいけない。ガウシカはポポと違って獰猛で人間を見たらすぐに自慢の角で刺してかかる気性の荒いモンスターだ。出来るだけ端っこを通ることにしてみた。…まあ、どうせ今すぐにでも死にそうな体なので、ガウシカを避ける、なんて無駄なことをしても多分意味はないな。うん




あ。調査開始に飲んでいたホットドリンクの効果が切れたことをここにお伝えします。身体を駆け抜ける冷気の感じ方が先ほどまでの比じゃない。一秒ごとに体の一部分が動かなくなっていく。何だか吹雪も吹雪いてきた。おかしいな、空はあんなに青空なのに、このマップだけどんどん空気が冷たくなって行くようだ。 腐っても俺はギルドメンバーの一人 悟った。これは恐らく、何らかの大型モンスターが出現する兆候 空気が、この場の全てが、そのモンスターの出現の為に塗り替えられていく。ガウシカたちがパッと顔を上げて何かに気付いたようだ。こんな時、モンスターは人間よりも気配を察知するのが上手くて羨ましい。俺?俺はもう駄目です倒れてます。もう立ち上がれないし、そろそろ本当に終わりっぽい。見てくれ、瞼と睫毛が凍り付いて動かないから目をギリギリ閉じずに済んでるなんて奇跡が起きてる。自分の体を抱きしめて擦っていた腕もクロスした形のまま動かないし、足も動かないので倒れてます。あ、でも凍土の地面って意外に冷たくない。土が軟らかいからだろうか、な、



ドン!!


「!」大きな震動が、寝そべっている大地を通して俺の頬に伝わってきた。ガウシカ達の悲鳴が聞こえる。ぼやけて来た視界に空から降りて来た、白い大きな体躯のモンスターが見えた。ああ、あれは――ベリオロスだ。見間違える筈もない。何故って俺はずっと凍土の調査隊をしていた。時にはベリオロスに遭遇したこともある。その度に俺はずっとずっと考えていた。あいつは、なんて綺麗なモンスターなんだろうって。こんな事を言えば他のメンバーたちから不興を買うのは当然だったので今まで口にしたことはなかったけど、俺はかなりベリオロスと言うモンスターが好きだった。あんなに大きな翼を持って凍土の地形とよく似合う白い体、雄の個体は雌の気を引くために琥珀色の牙を大きく見せて求愛するのだと言う。やっぱりモンスターでも異性には格好良く見られたいんだなぁ…、なんて考えてる場合じゃないんだけどなーー。あ、ベリオロスがガウシカを捕まえた。ガツガツと首を動かす後姿が見える。ああ…食われたのはお前だったかガウシカよ…。俺がぼんやりとした思考でガウシカのことを偲んでいると、食事を終えたベリオロスがゆっくりと動き出した。あ、と思った時にはもう遅く、ベリオロスは地面に倒れていた俺のことを見つけたらしい。ピタっと止まった顔がじっと俺を見てくる。俺はこの時、なんとなく嬉しい気持ちがした。「ああ、このままベリオロスに食われるんなら、それでもいっかなー」むざむざ大地の一つになるように骸化しなくても良いんじゃないか、ベリオロスの血肉の足しになるんなら、そっちの方がいいかも知れない。

だから俺は抵抗しなかった。元より体は動かなかったけど、じっとベリオロスを待つことにした。ベリオロスは不可解そうな、それでいて周囲への警戒を怠らずに俺の方へと近寄ってくる。のしのし、と歩くその姿が本当に綺麗だった。左右に開かれたベリオロスの翼は、ベリオロスをとても大きく、美しく見せていた。遂にベリオロスが俺のすぐ隣にまで来た。ぐっと顔を近づけられ、鼻で臭いを匂われている。あ、臭くねぇかな俺、なんて一瞬考えてしまった。『生きてんのか?これ』と言いたげなベリオロスの目が、俺の目とかち合った。…ああやっべえ、すげぇ、



「……きれい、だなぁ」




人間の言葉が分かるわけでもないのに、ベリオロスはきゅっと目を動かした。ジロジロと俺の顔を見る。なんとなく俺は場違いなことを考えていて、(…あ、このベリオロスはたぶん、雌だな)だって牙が普通のベリオロスよりも小さいし、琥珀色が少し薄れて見える。たぶん、雌だ。巣で待つ子どもの為に食糧を取りに降りて来ているんだろう。どうだろう、俺一人ぐらいじゃ大した糧にはなってやれないかもな。

「…!?」

え、な、なんだ?ベリオロスが、俺のすっかり凍りついていた服を口に咥えたぞ?え?え?と思っている間に俺の体が宙に浮く。「えっ!?」どうやら俺は、ベリオロスの口に咥えられたまま空を飛んでいるらしい。なんで!?連れて行かれるのか俺は!あ、そうか巣に持ち帰ってから食われるのか。やっぱり子ども用の食糧になるわけだな、俺は。

抵抗も出来ないので大人しくベリオロスに体を預ける。多分、端から見るとものすごく滑稽な図?になるのかもしれない。
ギルドの調査隊でも見えれば良かったけど、ベリオロスが滑空しているこの空間はベリオロスの力によって強い雪が吹雪いていた。視界が遮られていて、俺の凍った目に入って来るのはベリオロスの顔だけ。あと牙

大丈夫だ。もう俺の感覚器は死んでるから、ベリオロスの子どもたちにどんなに無惨に噛み付かれようと多分痛くない。…はず、だ。死ぬときぐらい無感のままで殺してください、お願いしましたよ美しいベリオロスさん















と、思っていたんだが 俺は何故か巣に持ち帰られても子どものベリオロスに食われていないどころか巣には俺を運んできたベリオロス以外のベリオロスは居らず、俺はと言えば凍えて冷え切った体をまるで母親に包み込まれるようにベリオロスのフカフカな腹の下で抱き込まれているのですがなんでしょうかこの展開は もしや俺の体を解凍して、柔らかくなったところを喰うと言う算段の下準備の段階にいるんだろうか、それとも俺は、もしかして、も、もしかして、ベリオロスに助けられたと考えるべきなんだろうか!!だ、誰か教えてくれ頼む! この状況はいったい、なんなんだ!


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