モンハン夢 | ナノ
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リーダーの顔が美人


ハンターは起きて早々に困惑していた。

この十日の間、ハンターはずっと村周辺の山々を見回っていた。この辺りでは見なかった大型モンスターの目撃情報があったからだ。
何日も野宿し、モンスターの足跡を辿り、餌にされた小型のモンスターの死骸や糞尿の後を見つけ、巣を探し、活動拠点となっていた谷間で該当のモンスターを見つけ、討伐し、ジュリアスの自宅である屋敷に帰って来たのがつい数時間前。
夜更けになってしまった帰還でも、同居主のジュリアスは起きていて自分が羽織っていた暖かなガウンをハンターの肩にかけ、雪で塗れていた髪の毛を優しく拭い取ってくれた。
そんな彼の優しさに心まで温まるような思いをしながら、もう今日は疲れたから寝ると、そう言って宛がわれている自室に篭ろうとしたハンターの手を取って、まあ、要約してしまうと「ずっと君がいなくて心寂しかったので、今日は共に眠ってくれまいか」と、そんな可愛らしいお誘いをされてしまえば応えない恋人はいないだろう。ああ、いいぞと笑顔で返事をしたハンターに、ジュリアスは真っ赤にしていた顔をさらに真っ赤にさせた。本当に、何年共に暮らしていても、ずっとこんな調子なのだ。

そんなことがあって目覚めた朝 窓から差し込んでくる陽光に起され、目を開けたハンターにまず飛び込んできた光景が、すぐ隣で寝ているジュリアスの寝顔だった

「………え 美人すぎないか?」

発したのはそんな言葉だった。そう、ハンターは困惑していた。久しぶりに見た恋人の顔が、あまりに美人だったからだ。

目を擦る。眼球を強く傷つけるな、目もハンターの資本だぞと目の前の恋人に言われたことをふと思い出したので瞬かせる方向にチェンジして、ヨシともう一度視線を戻したが嘘だろやっぱりめっちゃ美人だ

「……美人すぎる………」

具体的にどう言えばこの感想を伝えられるのか、頭の出来が良くないのでうまい語彙が見つからないけれど、とにかく目に映る全てがキレイで堪らない。

カーテンの隙間から差し込む朝の光に照らされて、キラキラと輝く銀糸の髪が綺麗だ
此方を向いて眠っているから顔も拝めてしまっているのだが、高く形の良い鼻梁が時折ひくつく動きすら綺麗だし、普段はむっすりと引き締められた真一文字の口が薄く開いて呼吸している様だって美人だ
顰められている事の方が多い眉だって、あどけなく山なりを描いているし、閉じられた目を保護するように生えた睫毛だって髪と同じ色をしているし、青い瞳も綺麗ならまつ毛まで綺麗だなんて全てが整いすぎている

なのに?なのに口を開けば、昨夜の可愛さか? 駄目だ、無敵すぎる
昔ドンドルマを拠点としていた時にルーキーから聞いた話を思い出した。
曰く「あの子――ソフィアのことだ――は、メモを読むときの伏せられた憂い顔は美人なのに…パッと顔を上げてクエスト斡旋してるときの様子がとっても可愛くって………無敵なんス……」
悪いルーキー うちの受付嬢も可愛かったかもしれないけど、俺の恋人だって負けてない。いや、こういうことは勝ち負けとかじゃないのはわかってるんだけど、もし、仮に、誰かに、己の配偶者の美醜の自慢話を聞かされ俺の恋人のことを貶されたと仮定したときに、対抗したいというか、いや、したくないような、そんなことをされてジュリアスは嬉しがるわけないと言うか……



「……………………、…いい加減に、してくれ……」

「 え?」


真っ赤な顔の青い瞳と 目が合った



「……ぜ、全部 口に出ているんだ…!」






誰のせいか俺のせいか
美人すぎる恋人は哀れにもその騒音で少し前にはもう起きていたらしい。なのに俺が、無意識のうちに全部口から喋って騒いでいたせいで起きるにも起きられず、じっと羞恥に耐えていたが限界が来たので口を挟んだらしい。
ここでも俺はなぜか打ち震えていた。だってやっぱり、俺の恋人は怒った顔をしていても美人なのだ。もうどうしたらいいのか全然わからん。俺はお前のその美しさに、何を返してやれるんだ?


寝台から出て朝の支度をしているジュリアスの背中に声をかけるも、「何も返さずとも既に君からは多くのものを貰っている…」と律義に返される。いや、そうかもしれない。でもそうじゃないんだ。こういうのはほら、恋人の矜持という奴だろう。ほかに恋人がいたこともないので本当にそれで合ってるのかは分からんが。にしても、羽飾りのピアスをつけて、髪を後ろで結わえようとしているその仕草すら絵になるというか……


「あー………………好きだ…………」
「……………君、それほど私の顔を好いていたのだったか…?」

しかめっ面のジュリアスが振り返って問いかけて来る。怪訝そうな表情に、うーんと俺も寝台から体を起こしながら考える

「いや、何だろうな……元からお前の顔もタイプではあったと思うんだけど、日に日に好きになってるというか……十日会ってないときも頭の中でお前を思い描いてたけど、実物の解像度が段違いだったんだ…」
「……… ………… ……」

今度は強く眉間を押さえだしてしまったけど、あれは照れているときの仕草なので気にせず服を着替えるために洋服箪笥の扉を開ける。階下から、朝ご飯のいい匂いが漂ってきた。キッチンの準備がもうそろそろ終わりそうだ。


よし、飯食べに行こうぜと声をかけようとする俺よりも先に
「…それは、私にも同じことが言えるのだが」

昨夜から引き続き、本当にお前はかわいいよ びっくりする


ビックリしすぎて勢いつけて抱きしめたまま寝台に倒れこみ、今度こそ本当に心からの気持ちを込めて「好きだ」と伝えると、もう明るい朝だからと真っ赤な抵抗を受けて遠慮がちに体を押し戻されるのだった





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