モンハン夢 | ナノ
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我らの団ハンターの何でもない一日


「団長さんなら、3日ほど前にお出かけになりましたよ」



長期の討伐クエストを終え、久しぶりにバルバレを拠点とするキャラバンに帰って来ると、迎えてくれた面々の中に団長の顔がなかった。
疑問に答えてくれたのは超メモ帳を抱えた受付嬢で、「お手紙が届いて、それを読むなり『しばらく留守にする。我らのハンターが戻ってきたら厚く労ってやっておいてくれ』と頼まれました。なので今日は、手厚くっ!ハンターさんを労いたいと思います!」そう言って手を引かれ案内されたのは料理長の厨房。「お帰りニャ、旦那」テーブルに座らされ、既に用意していたのだろう豪勢な料理が次から次へと目の前に積まれて行く。
「今日も腕を振るったのニャ。心して食べるがいいニャ」
自信たっぷりにそう言う料理長はまだ料理を追加する気らしく、新しい食材を鍋に放り込みながら新しい調味料の封を切っている。
「よいしょ」隣の椅子に座った受付嬢が、置かれていた木製のジョッキを手に取り、「ハンターさんの無事の帰りを祝って!」乾杯!とこちらのジョッキと音を鳴らす。

美味そうに発泡酒を飲む受付嬢の様子を見て、ようやく俺もフと一息吐いた。


「ありがとう、二人とも。こんな席を設けておいてくれて」
「なんのなんの!ちょうど一か月ぶりの帰還なんですから」
「そうニャ。旦那も私の料理が恋しくなってたニャろ?」
「ああ、恋しかったよ料理長」


熱々のチキンに齧り付く。最高に美味い。


「団長は留守として、他の皆はどうしたんだ? 姿が見えないけど」
「加工屋さん達はココット村に資材調達に出てるんです。商人さんもいま各地で取引を進めてるようですね」
「そうか。皆も忙しそうだな」
「はい。毎日楽しそうですからね」


自分の事のように楽しく話して聞かせてくれる受付嬢の表情も明るい。彼女も毎日、充実していて何もかもが楽しいのだろう。
良かった、と掛け値なしにそう思えた。
キャラバンの皆のことが大好きで、彼らの生活を守る一助となれていると自負している己の存在が、時たま誇らしく思えるのだ。
このメンバーで、誰一人欠けずにもう何年もやれて来れている。
俺のハンター業も問題なく、大老殿からのクエストに忙殺される日も、昔と比べて随分と緩和されたように感じる。


「ハンターさん、ゆっくりよく噛んで出来るだけ早く食べてくださいね?」
「難しいこと言うなぁ…」
「前回のクエストがどんな内容だったのか、じっくり聞かせてくださいね!ね!」
「分かってるよ」


料理長が渡してきた〆のサッパリとした魚介スープを飲み干すのを キラキラとした顔をする受付嬢が今か今かと待ち構えていた。
今回、彼女に話して聞かせるようなことはあっただろうか。
話のタネになるような、面白いことは起きていただろうか。

一か月かかったクエストの内容を振り返ろうと空を仰ぐ。

澄み切った青色した空を、渡り鳥の群れが飛んでいる。鷹ではない。
団長は、いつ帰ってくるんだろう。
誰が団長を呼び出したんだろう。
…ああ、


「……はらいっぱい…」
「寝てもいいですよハンターさん。寝言でクエストがどうだったか伝えてくれれば!」
「旦那、お茶でも飲むかニャ」



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