モンハン夢 | ナノ
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君の手料理


クエストを終えて家に帰って来れたのは深夜を大きく過ぎたころだった。
街灯もない小さな村は静まり返っており、家の者たちは皆眠りに就いているのだろう。

大きな音を立てぬよう、細心の注意を払って我が家の扉を開く。
中は暗く静まり返っており、自分の呼吸音以外の音は何も聞こえなかった。ゆっくりと体についていた雪を払い落とし、防具を外す。どうしても鳴ってしまうカチャカチャと言った音。
その音が聞こえて来たからなのかどうかは定かではないが、二階の部屋の扉が開く音がして、階上から控えめな声がかけられた。


「帰っていたのか」


寝巻きに、上着を羽織り、髪を下ろしているリーダーがこちらを窺っていた。


「悪い、起こしたか」

小さな声で謝ると、リーダーは首を振って否定した。
「帰りを待っていた」
そう言って階段を下りてくる。どうやらずっと起きていたらしい。本でも読んでいたのかもしれない。


「ごめんな。もっと早い時間に戻る予定だったんだけど…」
「君の言う予定は、いつも未定なのだな」
「はは…面目無い…」


力なく笑うと、リーダーは少しだけ双眸を眇め、今日の任務の仔細を訊いてくる。先日の村周辺の見回り中に見た未確認モンスターの確認と足取りの調査が主だった内容だが、成果としては芳しくない、もう少し足跡を追跡しようとしたが途中で猛吹雪に見舞われ痕跡が消えたのでやむを得ず帰還してきた、と伝えると、リーダーは理解し小さく頷く。俺の調べたことをまとめてハンターズギルドに報告書を提出し、あと村の皆や村長たちに伝えるためだ。


一通り話し終えると、僅かに空腹感が襲ってくる。腹を擦ろうとしかけたところで、タイミングよくリーダーが「腹は減っていないか」と訊いた。夕方ごろに携帯食料を口にしたぐらいだった。腹はペコペコだと伝えると、そうだろうと言うように一つ頷く、そして。


「キッチンが作るもの程ではないが、何か食べられるものを作ろう」
「――えっ お前が? ほんとに?」
「……大丈夫だ、口にできるものは作れる」
「いや、そこは心配してないけど」

リーダーが料理を作ってくれる。かなり珍しい。今までにあまりなかったことだ。

「えー楽しみだなー」
「……期待はあまりしないでくれ」
「それは無理だ。だって恋人の手料理ってやつだろ?ワクワクするって!」


サッと顔が赤くなったリーダーは誤魔化すように咳払いをして「座って待っていてくれ」と言い残し、キッチンの方へ向かった。


どんなものを作ってくれるのだろうか。本当に楽しみだ。


……外はこんなにも寒くて薄暗い寂しい時間だってのに、此処へ帰ると、

「…いつもお前のおかげで、すごく暖かいよ」


聞こえただろうか。いや、聞こえなかったみたいだ。

鍋や皿を探しているような、大きな音がキッチンの方から聞こえて来たから。




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