モンハン夢 | ナノ
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「#幼馴染」のBL小説を読む
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子どもを拾った


!出来心です。続くかは不明


―――




「子どもがいたんだ」


朝早くに雪山へ入り、村民たちから駆除以来の出ていたファンゴの群れの討伐に出ていたハンターが夕刻に帰宅すると、彼を玄関まで出迎えに行ったリーダーは目を丸く見開かせることになった。

雪の積もった防具と手甲に触れてしまわないようにと布で何重にも包まれてハンターの腕に抱かれている"それ"は、幼子だった。
生後一年が経過しているようにはとても見えない。
ハンターの逞しい身体と比較しても、小さすぎる顔が霜焼けの影響か真っ赤になっている。

それを見て呆然と硬直していたリーダーは、ようやくハッと我に返ると

「………ど、うしたんだ、その子どもは」
問いかけられた方のハンターは「それがな」と言いながらも器用に片手で防具を外し、武器を立てかけ、雪を落とし、暖の入った暖かいリビングへと入る。

「雪山の中腹に簡易的な山小屋があっただろ。そこの中で泣いてたんだ。子どもの声が聞こえて来た時は幻聴かとも思ったんだけど……山小屋の暖炉には火が焚かれててさ、毛布に包まったこの子が床に寝かされてた」

暖炉の火の近くに寄りながら、ハンターは子どもの頬についていた霜や露などを丁寧に拭ってやっている。
ハンターのその話を聞いたリーダーは、顔を顰め、「……捨て子か」
「だと思う」
「嘆かわしい。何を考えているんだ親は」

そう怒りを露わにしていた。年端も行かぬこんな幼い子どもを たとえ火を焚いていようが雪山の小屋に捨てていくなどと。

「何故そのような場所まで行って棄てたのか、並の労力ではないはずだ。モンスターも出るというのに……」
「………小屋の周りには人の足跡が2組分あった。それはこの村の反対方向の方角に続いてて、一応その足跡を辿ってみたんだけど、途中で途絶えてたよ」
「………それは、」
「ああ。その先は、崖だった。下を覗いてみたけど、何も確認出来なかった。雪に埋もれてしまったのか、それともモンスターに連れてかれたか……」

ハンターはそう言うと、悲しそうに眉根を寄せ唇の端を強く噛んだ。

「………君のせいではない」
「………」
「君がそこへ着いた時には、事態は既に終わっていたんだ。……君の優しいところは好ましく思っているが、負わなくていい責任を気に病む必要はない。 それよりも、今はその子どものことではないか?」
「……ああそうだな」

リーダーに微笑みを返したハンターは腕の中の子どもに目を移す。続いてリーダーも背後からそれを覗き込む。

子どもは外傷も殆どなく、衰弱した様子も見られない。不思議そうな様子で二人を見上げている。真っ黒い髪の毛はまだ短く綺麗に揃ってはいない。二つの目の色は薄い青。「お前と同じ色だな」笑うハンター。「髪の色は君と同じだ」指摘すると、確かにと頷いた。

「泣かないようだな。見知らぬ人間を見て怖がっている様子がない」
「初めてこの子を見つけた時に泣いてたんだけど、俺を見た瞬間は泣き止んだ。連れて行こうとしても大人しくしてたし、道中もあー、とかうー、とかも言わなかったんだ。それはそれで焦ったけど……」


「ニャッ? 旦那さん帰ってたのかニャ!」
「ああ、ルーム。良いところに」
「ニャ? ……ニャ!?子ども?」
「そうなんだよ。悪いんだけど、この子をちょっと風呂に入れてくれないか?」


事情を話すとルームは驚きながらも「旦那さんの頼みとあればニャ」と言って柔らかい掌で子どもを抱えると、風呂場の方へと駆けて行った。子どもはアイルーを前にしても何も喋らず、これまた不思議そうに見つめ返しているだけだった。


「一先ず保護はしたとして、だ」
「ああ。問題がある」
「おう。親やそれに関係する人物を探そうにも、難しいだろうな」
「少なくともこの村の者ではないだろう。新しく子どもが生まれたという報せは入ってきていなかった」
「旅人……だったとかかな? それに、もしかしたら棄てて行くつもりはなかったのかもしれない」
「と、言うと?」
「一旦あの子を山小屋に置いて、自分達は何か食べられるものを探しに行ったとか、辺りの地形の様子を見に行ったりしたのかもしれない。後で迎えに行くはずだった。……じゃないか? 違うかな」
「どうだろうか。私にはそれを断ずることは出来ない」


腕を組んでいたリーダーは、何かを考えるように顎に手を当てて黙っていたかと思うと、ふと

「……あの子どもを 君は面倒を看るつもりなのだろうか」

探るような視線だ。強い目力が込められた双眸がハンターの目を捉えている。

「 ああ、そうだな。拾ってきた責任があるんだ、それを放棄したり他のやつに譲渡するつもりはない。軽い気持ちで連れて帰ってきたわけじゃない」

「 そうか」

「……え? "そうか"って……それだけか?」
「? 他に、何か?」
「いや、もう少し"何言ってんだー!"とか、"軽々しく言うなー!"とか言われるかなーって……」
「?それこそ疑問だ。君が人命に関わるようなことを軽々しく請け負うような人物でないことは既に熟知しているつもりだ。君があの子どもの面倒を看ると言うのであれば、微力ながら私も手を貸そう。本当に、子どもの世話など、欠片ほどもしたことはないのだが、まあもっと手のかかる奴の指導をしていた頃もある。何とかなるだろう。いや。何とかしてみせる」

うんうん、と、なぜかハンター以上に深刻な表情で頷きなにかの決意を固めているリーダーの様子は、ハンターが下山する道中で思い描いていたリーダーの様子の予想とあまり差異はないものであった。こういう姿を見ていると、どうにも嬉しさを感じてしまう。
やはりいい奴だこいつは、と友人としても、恋人としても、お墨付きを与えたくなった。


「名前とかあるのかな、あの子ども」
「そもそも君の話を聞いていると、あの子どもは喋られるのか心配になってくる。言葉はどの程度発せられるのか」
「その前にやっぱ服じゃないか?うちにあのくらいのサイズの着るものなんてないだろ」
「いや、目下のところは食べ物だ。子ども用にまた別に用意してもらうようキッチンにも伝えなくてはならない」
「寝るとこ……寝るとこ!部屋とかどうする?俺はクエストでいない時が多いし、お前が一緒に寝てやるとかの方がいいんじゃないか?」


あーだこーだとお互いの意見をぶつけるだけの口論をしていると、ルームが扉を叩いて顔を覗かせてきた。入浴が終わったらしい。ルームと手を繋いで、ホカホカとした湯気を立てながらバスタオルに包まっている子どもはキョロキョロと、ハンターとリーダーの両名の間で視線をウロウロさせている。

「とても大人しくしていましたニャ、このニンゲンの子ども」
「そっか。ありがとうなルーム」
「ニャ」
「……フム。やはりまずは名前なのではないか? その子ども呼びでは些か不躾だ」
「確かに。物みたいだしな」


「おいで」
ハンターは子どもに向けて、安心させるようにだろうか、それとも完全なる素のものなのか、とびきりの笑顔を見せながら大きく両腕を広げながら近づいてゆく。
子どもは戸惑いながらも、ゆっくりとハンターに向けて小さな手を伸ばした。意外に立ち方はしっかりしていた。もしかすると1歳ぐらいは来ているのかもしれない。


「よぉーし、良い子だ。どれどれ…お、綺麗にしてもらったんだな!よかったな!」

柔らかい手つきで頭を撫でられた子どもは、目を丸くさせ、フラフラと視線を彷徨わせた後、コクンと頷いた。言葉はまだ理解していないが、とりあえず感覚的に首を動かしたようだ。

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