モンハン夢 | ナノ
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民俗学者書士の手記


!大全4ネタを踏まえて捏造MHX


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我らの団ハンターが手綱を握るポポの御車に揺られながら私はこの手記を書いている。この手記に書かれている内容は報告するべきものに非ず、個人的な所感となることを先に断っておこう。私がキャラバン『我らの団』の旅に同行並びに取材を始めて今日で早数ヶ月が経った。ギルドからの評判も高く、良い噂ばかりを耳にする当キャラバンに抱いていた当初の疑惑感などとっくのとうに霧散している。掛け値なしに、よい者達ばかりなのだ。まず何よりも、団員たちそれぞれが何かしら楽しげなのがいい。どこの街、どの地へ行こうと『ワクワク』と言った感情がついて離れないのだろう。そのメインたる人物が何を隠そう我らの団・団長その人なのだからより顕著に伺える。「あれは何だ!」「あそこに行ってみないか!」「あのモンスターを追え!」ついて出てくる言葉は正に幼子のそれだ。団員たちもまたそれに慣れ切っているのか、御する我らの団ハンターは黙ったままポポの鼻先を団長の指が指し示した方角へと向け直す。急な旋回でキャラバンの荷車が揺れても皆気にも留めない。唯一非難の声を上げるのは、乗り物酔いをするからなるべく旋回は避けて欲しいと唸る筆頭オトモ殿ぐらいなものか。揺れる車に座って静かに読書に明け暮れている看板嬢殿も欠伸を零すばかり。実は先ほどもまた、目的の街に向かうルートから外れてしまった。団長が草原にいた首鳴竜――リモセトスを見つけて興奮の声を上げたからだ。「なんだあのモンスターは!長い!首が長いぞ!近くで見てみたい!」という次第だ。私はこれを受けて、ちょうどさっき御者をしてくれている我らの団ハンターにそれとなく訊いてみていた。この数ヶ月で知った、彼の"話しやすさ" "気安さ"は美点の一つであるともついでに記述しておこう。
「ハンターさんはリモセトスってモンスターをご存知でしたか?」
「いや、初めて見ましたよ。小型モンスターにしては首が長いですね。いや、小型?あれは小型なのか?」
どうやらさしもの我らの団ハンター殿も、新天地となる地で初めて見たモンスターには興味を惹かれるようだった。遠目からリモセトスを見て「温厚そうだな」と。彼が厳しく目を細めていたのも一瞬のことだ。害はないモンスターだと判断するや否や、いつものハンター殿の顔に戻る。やはりキャラバン専属のハンターともなれば、まず大事なのは仲間たちに危害が及ぶモンスターかどうなのかということを見定めるのが常なのだろう。
我々は今、此処、古代林を抜け、龍歴院があるベルナ村への一途を辿っている。前述の理由により幾らかは予定到着時刻が遅れるだろうが、旅程は我らの団ハンター殿のおかげで損害は何もない。いやはや、私は彼の働きっぷりを直に目に出来たことを書士隊のみんなに伝えなくてはならない程だ。飛竜の咆哮が遠くに聞こえればすぐに飛び出して行って「追い払ってきましたよ」と笑う。牙獣種が食事をしている場面に遭遇すれば駆け出して行き「いなくなりましたよ」と笑う。団長は満足げに笑い、看板嬢殿は詳細を聴きたがる。勿論私も手放しに感謝を伝えた。この分ならば、これから我らの団団長、看板嬢殿、ハンター殿が向かう龍歴院でも、ハンター殿は一定の評価を受けられるだろう。「龍歴院に用事があるんだ、ついでにお前さんも付いてくるといい。ん?ああ心配するな、何もお前さんを龍歴院に売り飛ばそうとしてるわけじゃない!頼まれたってうちのハンターは他所にはやらんぞ、ワッハッハ!」と団長殿が言っていたことをここで思い出す。あの時傍で見ていたハンター殿の安堵の表情には、年相応の青年の顔を窺うことが出来たものだ。
長く続いた我らの団に同行する旅も、龍歴院に到着することで私の方も一区切りをつけることになるだろう。あと数刻で彼らともお別れかと思うと物寂しく思い、こうして手記を書くに至ったわけだが、実はここにきて、我らの団ハンターが、ハンターズギルドに属する筆頭リーダーたちと協力して古龍クシャルダオラをドンドルマで撃退したエピソードについてもう少し肉付けしたくなっていた。しかし既にハンター殿たちには散々取材をした後のこと。これ以上の追撃の手は良くないだろう、いや、書士隊の一員として内容に不足があった場合の妥協など、許せざる行いではないだろうか?だが私の人間性がここに来て邪魔をしている。ああ、どうにか他の者達からドンドルマ撃退戦の話を聞けないだろうか。よもやベルナ村に行って、そんなに運の良いことも起こるはずないけれども……。
「おおっ、見えてきたぞ!あれに見えるが龍歴院!」
「風車も見えてきましたね。あれがベルナ村か」
…おお、ついに目的地に到着するようだ。そろそろ下車準備をしておこう。
後ろ髪引かれる。いまは、そんな気持ちだ。




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