「はいどうぞ、坊ちゃんとハンターさんの分ですよ」
「ありがとうございます、おばさん」
「うお〜 美味しそうだなコレ〜!」
「フフ、元々はハンターさんの獲ってきてくれたお肉なんですから、たくさん食べるのよ」
村の中心である寄り合場は人で溢れていた。そう数多くない村の人間全員が集まっているのだから無理もないだろう。
みんなで猪肉シチューの入った大鍋を囲み、木で作られた手作りの椅子に腰掛け、食で胃と熱を満たす。
この村に"村付きのハンター"が生まれてから、村人たちは全員、この新しく生まれた団欒の時間を とても楽しみにしていた。
ハンターになる為にこの村を若くして旅立っていったリーダーが"筆頭ハンター"という役職に就いた事は、村人達も風の噂で知っていた。この小さな村からハンターズギルドのお偉い地位に就いた人間が出たのはまぎれもない誇りだ。
そんな彼が、故郷であるこの村に帰ってきてくれた。それも、一人の男を伴って。
その男はハンターで、いたく腕が立つようだった。溢れ出るオーラというのだろうか、とにかく、常人ではあり得ない貫禄を窺わせて。
それなのにその男は、こんな小さな小さな村の、"村付きハンター"になってくれるのだと言った。
共に連れ立って来たリーダーを見ながら。
それはとても、深い情愛に満ちた表情で。
勿論その提案は、村人たちにとっても、願っても無いことだったのだが。
「ハンターさんと坊ちゃんが一緒に村へ来てくれてから、もう二ヶ月も経ったんだねえ」
「早いよなあ。不思議だよ」
腕によりをかけて作ったシチューを その二人が美味しそうに頬張ってくれている姿を見ながら、雑貨屋の女主人は満足げにしている。隣でシチューに舌鼓を打ちながら同時に相槌も打っている加工屋の男も。
「ハンターさんが来てくれたタイミングも良かったよな。ここ数ヶ月の間、村周辺でのモンスターの発見報告が増えていたところでさ」
「そうそう。有難いことだよねぇ、まったく…。昔はモンスターなんて、殆ど見かけて来なかったのに」
「ハンターさんは腕が立つ、付き合いやすい性格だ!さすがは坊ちゃんの連れてきたお人だよ。…しっかし、ありゃあ、何かね。二人はどうも距離が近いように見えるが…」
「何言ってんだいあんた!鈍い男だねえ、見て分からないのかい? あの坊ちゃんとハンターさんの、お互いを見る顔!デレデレじゃないか!」
「ああ、どうりであの二人の周りだけ気温が二度ほど上がるわけだ。暖不足のこの村に有難いこって」
「この村に戻ってくるまでは、二人ともどこにいたんだろうさねえ。今度聞いてみてもいいかしら」
「なぁんでもいいじゃねえか。今がいいんだからよう」
「それもそうさね。どおれ。あの二人に、地酒を振舞ってこようかね」
「俺にも一本くれい」
「お前さんにはこの後、ハンターさんの使った大剣の手入れをするっていう大事な仕事が残ってるだろ!駄目だよ」
「それもそうだったかー」
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