モンハン夢 | ナノ
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筆頭リーダーと酒の席でぐだぐだ


今回のドンドルマ防衛作戦の総指揮官を務める、通称"師匠"と呼ばれる男が、我らの団ハンターの働きによりドンドルマに到着したその日の夜は、我らの団メンバー、筆頭ハンターメンバー、そしてドンドルマの街の住人たちなどを含めた大きな祝賀会を催すこととなった。

場所はアリーナを貸しきって行い、料理長は勿論、道具屋の主人や武器屋の手伝いなど、今回のメインともなる料理と酒の用意に一役買って出た甲斐もあり、大きなテーブルには溢れんばかりのメニューが所狭しと並べられている。料理長は張り切っており、今も厨房に篭りっ放しで、食べ終えたそばから次の料理が運ばれてくるほどだ。酒など言わずもがなで、蔵の中身を大放出せん勢いである。

さて、今回の主役とも言うべき"師匠"は現在、多くのドンドルマ住民たちの輪に囲まれていた。
筆頭ランサーや、話をしてみたがっている我らの団団長たちよりも、師匠を慕っている住民たちの数の方が多いため、主役を取られてしまうのは道理だ。しかし二人は特段残念がっている様子でもない。「なあに、まだ夜は長い。話す機会など幾らでもあるさ」と団長は笑い、「元気そうな様子を見れただけでも今は良いんだよ。話ならまた次の機会にするさ」と筆頭ランサーは落ち着き払った様子でジョッキに注がれたビールを飲んでいる。

その隣のテーブルでは、師匠の師匠に興味津々と言った様子で、ソワソワと落ち着かない筆頭ルーキーがいたり、
そんな彼を笑いながら押し留めては、ジュースの入ったコップを傾けている加工屋の娘と一緒に美味しい料理に舌鼓を打っている筆頭ガンナーがいて、

そしてそんな者達の賑やかな様子を 一座から少し離れた席に座って眺めていた我らの団ハンターの隣には、しかめっ面した筆頭リーダーが座っていた。



「あれが言っていた"お師匠さん"か。中々な御仁だな」
「ああ。…君にそう称されると、何故だかこちらまで嬉しく思う」
「そうか?……ああ、それは良いとしてもだ。どうしてさっきからそんな表情をしてるんだ?」
「……いや、我々にはドンドルマ防衛の任があると言うのに、このような事をしていていいのかという疑問が払えなくてだな…」

生真面目らしい彼の言い分としては最もだ。と言うより、「彼は絶対こう言うだろうな」と予測していたことがドンピシャであり、ハンターは思わず笑うしかなかった。そんなハンターの様子を、リーダーは不思議そうに窺っている。

「悪いことばっかりでもないだろう、こういうのはさ。戦前の景気づけってやつだ」
「そう…いうものなのか?」
「ああ。それに、不安がる必要だって少なくなったはずさ。なんせ師匠殿が到着して、ようやく防衛装置の着工に移れるんだから」

力強く言ったハンターの言葉を受け、リーダーは「……そうだろうか。…いや、そうだな。ああ、私にも理解できる」と一つ頷き、頼もしげに師匠を見た。
その様子にハンターも一人満足していると、急にリーダーが慌てて視線を戻す。

「勿論君の助けが得られていることも心強く思っている!」
「お、おう…。どうした、なんでそんな勢いよく言うんだ」
「………今のは、勢いがあったのか?」
「いや、結構なスピードで振り返っただろ」
「そうか……そんなつもりは無かったのだが」

――こういうところがあるから、こいつは面白い。
「あははは!」
声を上げて笑うと、リーダーは殊更目を丸くさせて驚いた。向こうのテーブルでジョッキを空にしていた団長が、ハンターの笑い声が聞こえてきたのか「どうした我らの団ハンター!楽しそうにしているな!」と言って新しいジョッキを掲げて見せる。どうやらあっちも相当デキあがっているようだ。此方も同じようにジョッキを持ち上げながら、「楽しいですよ、団長!」と返す。「そいつは上出来だぁ!」その反応に満足したように、団長は再びドンドルマ住民たちとの酒の飲み交わしに戻った。あの調子だと、まだまだ呑むのだろう。料理長のがんばる姿が目に浮かぶようだ。


「………それにしても、皆よく飲むものだ」
「んー…?いや、あれが普通だと思ってるけど……って、お前はあんまり飲まないのか。なんだその小さなグラスは!」
「わ、私はこの程度でいい。有事以外、あまり酒類は口にしないんだ」
「有事?たとえば?」
「急激な寒さに見舞われた際、手持ちにホットドリンクがなかった場合は多量の酒分を摂取して内側から身体の熱を増幅させることだが……」
「あー、そう言えば出身が雪国の方なんだったか?」
「そうだ、だから酒はそういう場合にしか多量に摂取しないようにしているんだ」
「なるほどなー。雪国か……いいな、俺もいつかそっちの地方に遠征するようになるかな」
「なるさ。君ほどの実力者であれば、どこの村から依頼が来ても不思議ではない」
「………はは、何だろうな、筆頭リーダー殿に褒められると、他の誰に褒められたときよりも嬉しく思うぞ、なんだこれ」
「そ、そうなのか…?それは……変わっているな。 いや、君が実力者であることは違えようはないが」
「いや、もーいいから!あんまそれ以上言わないでくれ!――ほら、もっと酒飲め酒!今は大宴会っていう有事だ、有事!」
「ま、待て!君、もしやだいぶ酔っているのではないか!? ま、待ってくれ、そんな…!」




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