ぼくから
我が信愛なる友人殿へ――
ハンターズギルドへの報告書以外に文を認めたことがない為、不備や不手際、果ては誤字又は脱字等があるやもしれませんが貴方様の寛大な対応に期待して筆を取らせて頂きます。 長かった冬の季節が終わり、アプトノスやケルビが野を駆け回る温かな春を迎えましたが如何お過ごしでしょう、(不自然な文字の途切れがある)
申し訳ない。 恐らく私は 自分が考えている以上に、この手紙を書いていることに対して緊張をしている。可笑しな話なのだ、紙を用意し、インクにペンを浸しているまでは、書きたいことが山ほどあったのだ。君に伝えたい事柄が沢山あって、これは書き切れるか心配だなと笑えていたのだ。それが、まったく、どうしたことか。何から手をつければいいのやら、分からない。
一先ず、 元気 だろうか? 君が代わらず息災であるならばこれほど嬉しいことはない。蛇足ではあるが、私の方は元気だ。
最後に顔を合わせてからもう10年が経過している。気が付いているか?君とギルドカードを交換したことも、君に手を取られて共に食事をしたことも、少しの差で君との釣り勝負に負けたことも、今も鮮明に思い返すことができる。それ程に、君と過ごしたあの日々は私にとってとても…大切な思い出となっているのだ。(書き迷ったのかインクが一部滲んでいる) 君からの音沙汰がないこと 本音を言えば少々心寂しく、そして不安に感じている。
今君はどうしている? 私が知りたいのは、この一点のみなのだ。
"我らの団"のものらしき情報は此方へも少ないが届いている。
だが、"我らの団ハンター"に関する内容がちっともギルドへ入って来ないのは何故か?
頼む。ただ一通、たった一言で構わない。
君の言葉が欲しい。
いや、意地でもこの手紙を君の許へ届けてみせる。だから君はこの手紙を読んだ後、必ず返事を私に寄越すように! 書けないとは言わせん。書くんだ。いいな、絶対だぞ。 もしこの手紙が君を見つけられず、再び私のもとへ帰って来ようものなら私は泣きかねん。それに君に対し怒るかもしれない。本気だからな!
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今、一枚目を書き終わったので読み返してみたところ、本当に手紙とはこのような感じでよいのか?という疑問が生まれた。 私では判断しかねるため、やはり受取人である君自身に判断してもらうしかない。
返事を待っている。
どうか出来るならば 顔を見たい 会いたい
(残りは全て空白)
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・長旅の疲れで、鷹は腕の中で穏やかな寝息を立てている。
大切に運んでくれた手紙も、今は掌の中。
初めて見るあいつの字は、とても綺麗だった。
「もっと怒られるかと思ってたな…」
連絡を寄越さなかったこと、消息を断ったこと、全てを責められるかと思っていた。
あいつの想いの全てが"会いたい"の言葉に集約されている。
「アプ」
草を食んで休息を取っていたアプトノスに声をかける。ゆったりとした動作で鼻先を向けた彼に、また一仕事お願いをする。
「寄り道で悪いんだが、途中の街に寄ってくれるか?」
『グオゥ』
「ああ、便箋を買うんだ」
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