「大老からこんなものを貰った」
こんなもの、とはまた何だその言い草は。
それにはれっきとした「G1許可証」という名称がついている。
「やるじゃないか。それでこそ私が……………」
「認めたハンター?」
「………。 ハンターの中でも選ばれた者にしか与えられない勲章のようなものだ。誇ると良い」
「ほー……」
恐らくだが、彼は未だにことの凄さを理解していまい。
ドンドルマ防衛任務が完了してから、彼が大老殿へと出向いていたことは知っている。幾つかクエストを受け、何日も戻って来なかったことも分かっている。そして久方ぶりに街へ姿を見せた彼が持っていたのが、その許可証だった。
「これまでとは比にならない程の強さを持ったモンスターとの相手を強いられることになる筈だ」
「…やだなあ火山のクエストなんかが増えたりするのは」
「……君にこのような事を口に出すのも吝かではあるが、準備は決して怠るな。慢心してもならない。何度戦ってきた相手だろうと油断は命取りになる」
「あー、うん、そうだよな。気ぃ引き締めてかかることにする」
「ああ。」
「…で、早速幾つかクエスト依頼を出されててな。 えー…アルセルタス亜種、ケチャワチャ亜種、ド、ドスガレオス二頭…!?」
彼が今猛烈に表情を歪めた理由はドスガレオス狩猟の舞台が砂漠だったせいだろう。全く君はどれだけ暑い場所が嫌いなんだ。
せめて力になれれば、と「餞別だ」クーラードリンクを手渡した。「おうありがとう…」受け取る彼に気迫が感じられない。そんなことで、G級クエストを受けて大丈夫なのか。
もう何度も言ってきたような気はするが言い足りないので何度でも言おう。
「君が死ねば、私は泣いてしまう」
だからどうか、必ず生きて帰って来て欲しい。
「 分かってるよ」
――そうやって頼もしく笑う顔を あともう少しだけ見送っていたいのだ
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