ディーノ長編 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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05

オートボット達の隠れ場所に、新たに三名の人間が増えた。

所在の知れなかった、オートボットのリーダーを引き連れて。

≪まーた変なのが増えやがった≫

苦々しげに呟くクロスヘアーズの気持ちは分からないでもない、とディーノは思った。基本的にディーノにとって、ジーク以外の人間は「どうでもいい」か「殺すべき」かのどちらかに分類される。今回は前者になった。五体満足のままオプティマスと合流出来たことは、彼の言う通り人間の力に因るものなのだろう。ジークのように、まだトランスフォーマー側についている人間がいたのか。物好きなことだ。


「――やあ」

新しく加わった人間のことを警戒しているトランスフォーマー達はともかく、ジークの方は仲間となった3人に対して興味津々だった。
警戒させないようになるべく笑顔を浮かべて近付いてみる。最初に視線を向けてきていた男が不可解そうに会話に応じてきた。

「あんたは…?」
「私はジーク、この戦いに進んで巻き込まれに来たただの一般人だよ」
≪ 白々しいぜ、ジーク≫

ジークの背後に立っていたディーノが腕で軽く頭を小突いた。
そのやり取りを見ていた目の前の男はポカンとした顔をしている。

「……そこの赤いオートボットとは、何か関係性があるのか?」
「ああ、私の恋人なんだ」
「――――は?」

想像通りの反応だった。

「…そんなに眼を真ん丸くされると、照れてしまうな」
「いや、何でだよ!」
「まあまあ。細かい自己紹介は後ほどさせてもらうから、まずは名前を教えてくれないか?」








状況は思っていたよりも酷い。
まずラチェットが死んでしまっていたこと。彼の死はオートボットの戦力に多大なる影響を与えるだろう。元よりトランスフォーマーに備わっている自己修復機能では補い切れないほどの破損をした場合、死に直結する可能性が増した。死に際は惨たらしいものだ。集中砲火を受け、海へと落ち延び、逃げ込んだ先で袋の小路、最期は生きたままスパークを抜かれ、ラチェットは生命活動を停止させた。
次いでレッドフット。彼もまた同じように囲まれ、銃弾の袋叩きにされている。ハウンドが頭部のメットを外し、哀悼の意を見せていた。
ケイド・イェーガーが用意していた小型カメラに保存されていた記録は以上だが、もっと、それ以上に多くのトランスフォーマーが命を落としていることだろう。通信が届かないのもその影響だ。ドリフトが苦々しそうに≪人間め≫と吐き捨てる。


「………」
≪…?どうしたんだよ、ジーク 黙ったまま≫
「いや…もしかしたらディーノもあんなように死んでいたのかもしれないんだな、と考えると怖くなった」

ビークルモードとなったディーノの車内で、シートに深く凭れながらジークは嘆息する。
ふー……。ずっと溜め続けていた疲れのようなものが、今ここに来てどっと押し寄せて来たような感覚がした。

≪なに、起きてもねぇ事を考えてショボくれてやがる≫
「しょぼくれてはいないさ…憂えていただけだろう」
≪くだらねぇ。オレは今こうしてスパークを輝かせてる。ちゃんとオレを見ろジーク≫

促され、視線を前方に留める。

≪な?≫

主張のつもりだろうか。ブンブンと両方のワイパーを左右に振って見せた。

「………ふふ」
≪…フンッ≫

可笑しい。自分からやって見せておきながら、照れているところもまた、


「…愛しいなあ、ディーノ」
≪………うっせぇ≫








「……あー、そこのお二人さん。イチャついてるところ申し訳ないんだが、今後の行動について話し合いたいから来てもらえるか?」


「やあ、これはすまないケイド君。今行こう」
「…ケイドくん、て…そりゃあまあ歳は下になるけど、まさかこの年齢にもなってクン付けされる日が来るとは……」



≪……ガン飛ばしてんじゃねぇぞクロスヘアーズ≫
≪…ちげぇ。気持ち悪ィもん見て損したぜ、って思ってるだけだ≫





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