ディーノ長編 | ナノ
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13

あちらこちらに監視センサーがあり、隠れながら逃げるのも簡単なことではなかった。見回りのドローンたちが徘徊している。それに何よりも、腹部がとても痛む。自己修復機能が追いつかないのは、多量のエネルギーを流してしまったせいだと思いたい。よもやこの機能を失ってしまうのは死活問題だ。
脱出の際、咄嗟ではあったが掴んだ自分の左腕を どうにか今すぐ結合させることは出来ないかと模索してみる。千切れたときには火花を散らしていたケーブルも大人しくなっているし、繋ぎ合わせられないか? …とても不恰好だが、一応くっついた――引っかかっているだけ、とも言う―― しかし少し揺らせばまた千切れそうだ。

≪……で、 そろそろ息は整ったのかヒューマン≫
「ちょ…っと、待ってよ……わたし、女なんだからね…そう、すぐに、動けるように、なるわけ……」


これだから人間は面倒くさい。
女であるとか、若いとかどうとか、そんなことディーノにはどうでもいい……

いや、だが最近ジークも「年のせいですぐに息切れするよ辛いね」と言っていたことがある。まったく、あいつはいつも無茶して運動をするのだ。"ダイエット"を試みて怪我をするなんてバカバカしい。体重が増えても見た目には大した変化など無いくせにと思いつつそんな穏やかな日常の中にいて、それを見守っていたことがもう遠い昔の出来事になっていた。


≪…………≫
「 ジークさんのこと考えてるの?」

まったく、勘が良い人間も嫌いだ。

≪黙れヒューマン テメェは自分の心配をしてな。…行くぞ≫
「ああっもう、待って!」


――しかしまったく運の悪いことに、前方に早速見回りのドローン達がお出ましだ。


≪ 走れヒューマン!!≫
「えぇっ? …きゃああああっ!!」


スチールジョーたちだ。ビースト型の奴らは足が速く、すぐに距離を詰めて来る。片方しかないブラスターでは撃退するのが難しい。
命じてすぐに奥へと逃げて行ったヒューマンの方が気にかかるが、ここで食い止めておかなければ後追いされると面倒だった。どうしても地の利はあちらにある。牙を光らせて飛び掛ってきたスチールジョーと一頭ずつカッターで応戦する。知能は低い奴らだが連携して複数で飛び掛って来られると対処が遅れる。

≪……クソ犬どもめ!オネンネしてな!≫

テメノスの壁へと仕込みフックを伸ばし、空中を伝いながら銃で狙撃して行く。
≪ギャウンッ!≫
悲鳴を上げながら、スチールジョーが後方へと吹っ飛んでいく。

仲間がやられた姿を見て飛び掛るのを逡巡した数匹がディーノを追うのではなく、逃げた人間を追おうと踵を返した姿を見てディーノは焦る。


≪クソッ、待て!≫


――ああ鬱陶しい犬だ! 
狙いが定まらず、攻撃をあてることが出来ない。

そして一頭のスチールジョーが、ディーノの腹部を狙って噛み付いてきた。
≪グアァあッ!!≫
強烈な痛みにアイセンサーに青白い火花が散った。振りほどこうにも強く牙を立てている為に振り払うことが出来ない。ならば撃ち抜いてやる、けどそれでは別のスチールジョー達に隙を見せることに……




「ディーノ!!」


 幻覚か
 いや違う
 此方へと駆けて来るあの姿は間違いなく


≪………、……ジーク! 何で、なんで来たんだ!!≫


スチールジョーもジークの存在に気が付いた。
「つれないことを言う。」
牙を見せながら威嚇し、飛び掛る姿勢を取っている。
「あんな眼で見られて、来ないわけないだろう」
スチールジョーの眼が、ジークを捕捉した。
「会えて良かった。」
ディーノの悲痛な声も、手も、制止になることは出来ず、ケモノたちは一斉にジークへと飛び掛った。


「……その子を返して貰おう」


不敵に笑う彼が懐から取り出したのは二丁拳銃




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