ディーノ長編 | ナノ
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≪こいつらを廃棄場へ連れて行け。ディーノのコグは抜き取り保管し、そっちの車はスクラップにしておけ≫と命令する声が聞こえて来た。

テッサは息を潜めて車内後部へと隠れていたが、ドローン達に引き摺られていくディーノは傷が痛むようで苦しげに呻いている。何とか、助けなければ。そうでないとテッサもディーノも、このまま処理されてしまう。彼は動けるだろうか。僅かでもドローンたちの気を引いて隙を作れば、何とかなるかもしれない。輝きが疎らになりつつあったディーノの青い目と視線が合う。憎々しげな表情をされたが、頷いてみると、彼も静かに頷いた。こんなところで死にたくない、青い目はそう告げてくるようだった。

アームの伸びたドローンたちが次々にスクラップを処理している間に通される。
その内の数対が運ばれて来たディーノを解体しようと近付いて行く。車に隠れているテッサのことには気付いていない。やるとすれば、今この時にしかない。

自動車の横を通り過ぎようとしていたドローンの身体に、思い切りサイドドアをぶち当てた。


≪ギャ ――×××!?≫
≪×××!!≫

ドローンたちは言葉に表しにくい叫び声を上げながら突然の人間の登場に驚いている。キーキーと甲高い音でアームを振り回し、テッサに襲い掛かってきた。

「きゃ… こ、んの…!!」

足を使ってドローンを蹴り上げ、車内に落ちていたフックで相手の眼に引っ掛ける。
「ディーノ!!」 早く!
テッサの呼びかけに、ディーノは≪…るせェなヒューマン! オレに命令すんじゃねぇ!≫と苦し紛れに出た捻くれた言葉と共に、彼の足を掴んでいたドローンのアームを掴み、逆方向へと捻り折り曲げた。その場に片腕だけをついてクルリと回転し、回し蹴りを食らわせ、よろけたドローンを溶鉱炉の中へと落とし込む。不安だったが、右腕のカッターは上手く機能した。跳躍し、テッサとドローンたちの間に割って入りこみ、ずん胴な胴体を真っ二つに切り裂き、同様に溶鉱炉にへと突き落とす。
作業ドローンは一掃したが、天井に取り付けられている監視用のドローンたちが事態をテメノス内部の兵たちに伝えた。

≪チッ…! オイ、こっちだヒューマン!≫
「あ、ま、待って!」

監視ドローンを狙撃しながらディーノが先行する。足を縺れさせながらテッサも後に続いた。
行く道の先には、ディーノの腹部から流れ落ちたオイルが点々としていた。








「ディーノを救い出さなければならない」
「テッサもだ、忘れんな」
「お嬢さんの救出は君らがやればいい、私はディーノを…」

≪おいお前たち、オプティマスもいるって事を忘れてんじゃねぇぞ≫


飛び立ったテメノスは何故か市街地で不時着したが、理由はどうでもいい。宇宙船を見上げている男たちの眼は鬼気迫るものがあり、それぞれの救出対象のこと以外は頭に入っていないようだった。その人間たちの直情的な様子にハウンドは溜息を漏らす。やれやれ、ここは歴戦の戦士である自分がしっかりとこいつらの手綱を握っていなければ、と。だがそんなハウンドの意思など知らないクロスヘアーズは面倒くさそうに≪どうでもいいが早いとこ乗り込まねぇとコイツもいつまた飛び立つか分かんねェぞ?≫そう言って人間たちの焦りを掻き立てたのだった。








「俺、絶対に下を向かない」

テメノスの外部から侵入を試みたのはいいが、あまりの高さにシェーンは眩暈がした。「これぐらいの高さで弱音か、だらしねぇなアイリッシュパブ」情けないことを言うなと咎めたケイドの声も、シェーンの様子にも気を留めていないジークの頭には恋人のことしかなかった。連れ去られてゆく彼をただ見ていただけの自分が、酷く堪えたのだ。こんなところで失う為に、あらゆるものを利用してまで恋人を逃がし続けてきたのではない。いずれどちらかが死ぬようなことがあるとすれば、それはジークの『老衰』でなければいけないと、ずっとそう考えている。


≪気をつけろよお前たち、ここはもう敵地だ。どんな罠があるか分からん≫

注意深く警戒を続けているハウンドに対して、敵地潜入などと余裕綽綽な様子のドリフトは頭を軽く振る。

≪だが無駄な戦いは避けるべきだ。暴力に頼るのは最終手段で……≫

その横から触手のようなドローンが飛び出して来た。

≪ウワッァアアアアアア殺す!コロス!ころす死ね死ね死ねぇ!!≫
≪……"暴力に頼るのは"、"なんだって?"≫





「……やはり広いな」
「テッサたちは何処だろう」
「手分けするのが効率が良さそうだな」
「おいおい、ここは敵地だってさっき言われただろ?単独行動はやめといた方が…」
「しかしこうしている間にディーノが…………」

ジークはあふれ出してくる焦燥感に押し潰されそうになっている。人間たちの中では一番の年長者であり、出会ってからずっと落ち着いた穏やかな彼の顔がここまで強張っていることから、余裕が無くなってしまったのだろう。

実りのない人間たちの作戦会議に、いくらか落ち着きを取り戻したドリフトが≪急げ。この船はあと10分ほどで浮上するぞ≫と急かした。「飛び立つだって!?まじ!?」大慌てなシェーンのことは捨て置き、「俺たちはこっちから見て回ろう。きっとあんたの恋人とも何処かで落ち合えるはずだ」とケイドは硬直していたジークの背中を押した。釣られてジークはそれに従う。
「…ああ」

ディーノは酷い怪我をしていた。早く、ディーノの近くに行ってやりたい。無事な姿を見て安心したかった




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