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▼ Day after day,

知らない間に腕に出来ていた青痣を撫でるローの手付きが優しい。
よしよし、と まるで母親が我が子を慈しむような手だ。少し気恥ずかしくなる。もう40も近い男が、一回り以上も年下の者にそうされてしまうのは だが勿論、悪い気なんてしない。膝の上に乗っかって 痣の心配をしてくれているのか甘えているのか、もう判別も付かない程に体を弛緩させているローの細い体をぎゅっと抱きしめた。喉の奥から聞こえるような微かな笑い声が上がる。 腕を撫でるのを止めたローの手が、所在無く投げ出されていたナマエの手を取って握り締める。指の一本一本を確かめるように重ねられ、「なんだ?」と問えば「なんでもない」と答えるローにふ、と笑みを返す


「こんなにゆっくりしてて良いのか? そろそろ良い子は寝る時間だ」
「おれはイイ子じゃないから、まだ寝ねぇよ」
「…そうだな 知ってる」


ローは、悪い子だ。 冷やかすように伝えれば、ムッと顔を顰めたローに頬をはたかれた。

外には真っ暗な暗闇が広がっている。 船を休める為に海面に浮上しているが、外は夜 海底の薄暗さとあまり相違ない。泣き声のような海鳴りが聞こえたり、穏やかな潮騒が此処まで届き、他の船室からは物音一つ聞こえない。警報システムも反応を示さない、全く静かな夜である。

夕食の席で、要約すると「今日はおれの部屋に来て」と言ったローからのお願いを快諾して何をするでもなく二人で時間を潰す事早一時間 部屋に来たナマエの腕の痣を目敏く見つけたローがソレを触っているのを見ていたぐらいだろうか



「……喉が渇いたな」


食堂から貰って来る、そう言って立ち上がろうとすればローが遮った。「"ROOM"」「?」ローの作ったROOMの薄い膜が部屋を包み込み、手近にあった医療本を掴んだローの手に、代わりに食堂にいつも常備されている水の入ったボトルが現れる
「…こんな事でいちいち能力を使うもんじゃないぞ?」有り難く受け取りつつも説教すれば、「…ナマエこそ、こんな事でいちいち離れんな」 …それもそうだろうか?…そうだな。「すまない 許してくれるか?」甘えるような声が出た。ローも仄かに照れながら「…フン」と頷いた。


ローは何も言わないし、あえてナマエから口に出したりもしないが、時計の針は頂点を回っている ――今日はローの誕生日だ


"訊かれなければ答えない" "欲無しのロー" だから仕方ない
 
ナマエが初めてローの誕生日がいつであるかを知ったあの時、ローは確か不満そうな顔をしていた。"保護者"であるとナマエから伝えられ明確な境界線を感じていたあの頃よりも、現在は格段に理想に近い場所にある。
満足している。ナマエがいてくれる誕生日を迎えられた、それだけで今がとても満たされた――



「なんて言うと思ったか」
「…頼む、ロー お前の頭の中だけで結論をつけないでくれ」
「今日はおれが生まれた"誕生日サマ"だぞ? 何か寄越せナマエ」


頼み方が下手くそだっただろうか? ローは己の誕生日の日に、誰かに何かを強請ったことがない
ナマエと過ごしていた二年間の日にも無かった為に、今この年齢になるまでそれをする機会がなかったのだ 強請ればプレゼントをくれた相手がいたようなこともあるが、"アレ"にそんなお願いをしたいなんて思ったことはない。何かを思い出して嫌な気分になっているローの顔を見て、ナマエはやっぱりローも大人になったんだなぁと一人関心していた。


「何が欲しいんだ?」
「何なら用意できるんだよ」
「そうだな…ケーキは無理だしな 俺が作れればいいんだが…」
「………」
「…料理を作ったら満足してくれるような奴でも、お前はないしな」
「分かってくれてんなら結構だ」


――で? ナマエの首に腕を回して調子に乗って来たローが尚も言い募る。
うーーん……。いい案が思い浮かばない。何かを買って渡すにしても、ナマエが持っているベリーは全てハートの海賊団…引いてはローから貰った、言わば"お小遣い"だ。貰ったお小遣いで買った品物をローに渡す…還元か何かか? あまり良い案じゃない。 じーっと見つめ目で催促してくるローの視線を受け止めながらナマエは頭を抱える



「…何か言ってみてくれよロー」
「欲しいものをか?」
「ああ 一つぐらい、教えてくれたって良いじゃないか」
「んー……」


…やっぱり物欲のない奴だなぁお前は  …うるさい 呻るばっかりで答えないローはやはり物欲がないようだ。「ナマエも一緒に考えろ」「ローの欲しいものが何なのかをか?」「そう」 どう言うことだ、それは。しかし頼まれてはしょうがない。誕生日は誕生日の人が主役になる日だ。ローの脇に手を差し込み、そのままふらりと二人 背後のベッドに倒れ込む。



「じゃあ考えようか、ロー」
「…この体勢になる意味は?」
「あまり無いかな。  じゃあまず、ローの好きな物が何なのかを訊いてから考え始めよう」
「ナマエ」
「 ありがとう、ございます? ……他は?」
「手術」
「…懐かしい感覚がするなあ」



「俺と手術は同列なのか?」と揶揄えば、「う、る、さ、いー」ほっぺを挟まれた。

結局ローに贈る誕生日プレゼントを何にするかは、夜明け近くまで話し合っても決まらなかった。途中、話を脱線して色々やっていたのも原因の一つかも知れない


Day after day, lovers cry at night.
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