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▼ 07

大量の海兵が流れ込んでくる。各々が銃剣を所持し、周りにいる他の海賊団への牽制も始めた。

我先にと飛び出して行ったバンダナたちの姿を見送り、ナマエはジェントル等と共に高台に上って下の戦地の状況を判断する。海岸に大きな海軍船が見える。「なんだ、あれは…」双眼鏡で見ていたジェントルの不穏な呟きに釣られナマエも其方へと視線をやれば、一般的な成人男性程度の海兵と比べると、途轍もなく大きな"何か"が船を降りて来ようとしていた。しかも、一人だけではない。体のサイズが通常の人間らしくない、規格外の大きさを持つ男?のような者達が重たい足音を立てながら上陸を始めている。


「…立てる足音が尋常ではないですね。こんな所にまでズシンと聞こえてくる」
「……何か嫌な予感がする。ナマエ殿、早急にキャプテンと合流しよう」
「はい」



隣にいたジェントルが銃を構えた。普段はラッパ銃を使用している彼だが遠方戦の為に慣れないマスケットで戦っている。その横顔を見て、ナマエもマスケットに火を付けた。人に向けて実弾を放つことに対する不安感は、もうとっくに無くなっていた。もうすぐ一年になるかならないか、こうしてこの世界で過ごしていたことは、良くも悪くもナマエに影響を及ぼしている。

一人の海兵を照準に入れようとして片目を閉じたところで妙な眩暈がした。まただ。ソレを振り払おうと頭を左右に振って、再度海兵に銃口を向け引き金を引く。ダン!と大きな音が耳元でして、銃口から放たれた銃弾は真っ直ぐに海兵に向けて飛んで行く。


だが少しばかり弾道がずれた。
狙っていた場所から外れ、足元近くに着弾しそうになる。
(…曲がってくれ) 無駄だとは思いつつも、次の弾を込めながら胸中で念じてみた。どんな風が吹こうが弾の軌道が修正されることはない。そんなことは百も承知である。


しかし、だ



「うわああああっ!!!」


「…!?」



軌道をずれていた弾が、持ち直した 馬鹿な

海兵の足元に今正に当たらんとしていた弾が何かに引っ張られるようにしてグルリと先を真上に向け、肩を貫いて行った。

「…」状況を忘れ、口を開けて呆けてしまう。今何が起こったのか、自分の見たものが信じられなかった。見間違いではない。良くなりすぎた視力は鮮明に今の場面を捉えていた。それは隣にいたモーブからも上がった。「…え? い、今なんか…弾が独りでに動いてなかったです…?」スコープを覗いていたからモーブにも見えたのだろう。 え?え??と表情を疑問符でいっぱいにしながら、未だ固まったままのナマエの方を見ている。



「…今のは、一体、何だと思うモーブ君…」

「………もしかしてっすけど、ナマエさんが食った"ホミホミの実"って… "ホーミング能力"って、ことすかね?」


………。 ナマエとモーブの間に沈黙が流れ、ハッと閃いたのは二人同時だった。
そうかも知れない、と思える要素ならある。視力、次いでは動体視力が格段に良くなり、人の僅かな動きや機敏に反応するのが早くなったのは、悪魔の実の影響の一つだったのだ。「も、もう一回やってみてくださいよナマエさん! 力は早くモノに出来るようにしといた方がいいって!」「あ、ああ」モーブの大きな手に背中を押され、もう一度銃を構える。さっきは、どうやっていただろう。弾が独りでに動いたとは言ったが、まさか撃つ弾に意思を込めるなんて能力ではない筈だ。
よもや「曲がれ」と念じたのが功を奏したのか? とにかくもう一度やってみるしかない。わざと在らぬ方向に向けて弾を撃つ。ジェントルから「ナマエ殿?」と疑問の声が上がった。誰もいない場所へと降っていた弾を見つめながら、同じように呟いてみる。「曲がれ」 弾は曲がった。いや、言葉に反応したのではないようだ。曲がれ、と言うより前に海兵の一人を視界に捉えた瞬間、弾は勢いよく軌道を変えた。それこそ、直角に、だ。「ぐあぁっ!」腹を撃たれた海兵が身を捩りながら倒れるのを見て、やはり呆気に取られた。「…すげー 狙撃手からすれば垂涎モノの能力っすね」と言うモーブの声がやけにはっきりと聞こえる。

この能力がナマエにとって使えるものなのか、使えないものなのかは元より、本当に能力者となってしまったのか、と言う実感の方が強く感じられていた。









"冥王"シルバーズ・レイリーの登場もそうだが、麦わらの海賊団が"やらかした"天竜人に対しての所業が、どうしてか火の粉となってこちらにも降り注いで来た。

共犯者だと言ってしまえば言葉は軽く感じられるが、実際はとんでもない犯罪者だ。


冥王の覇気に当てられまだ気分を悪くさせているシャチが「…なんつー日だぁ」とみっともない声で嘆いている。
「諦めろ、キャプテンに付いてくって決めた日から、こんな事ばっかりじゃないか」と言うペンギンの慰めになっていない慰めの言葉を聞きながら、ローは立ち上がった。ベポに預けていた鬼哭を受け取る。やってられないな、全く。

だがこちらが動き出すよりも、海軍との戦闘を嫌がったユースタスの海賊団が先に入り口へと出て行こうとする。



「もののついでだ お前ら助けてやるよ! 表の掃除はしといてやるから 安心しな」



・・・聞き捨てならない言葉である キッドの煽りにカチンと来たのはローも、ルフィも同じだった。
今、オークション会場の外ではナマエやクルー達が戦ってくれている筈 それを思うと一刻も早く助太刀をして、大将が来る前に安全にこの島を出たいと思っているのだ。それなのに、ユースタスの海賊団に任せておけ、だと? 任せておけるか。


それと、おれに命令するな




「お前ら…下がってていいぞ」

「お前ら二人に下がってろと言ったんだ」


「もう一度おれに命令したら、お前から消すぞユースタス屋」



入り口の前に陣取っていた海兵達が一斉に武器を構え出した。



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