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「#幼馴染」のBL小説を読む
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▼ 06





「ナマエさん、何ですって?」
「…後で説教しとかねぇといけねぇ」

は? シャチはポカンと口を開けた。

静かになった電伝虫をベポに預け、通路の真ん中から入り口付近にかけて散乱した瓦礫と、その中央に立つ人物を見てローはニヤァ…と笑みを浮かべる。
麦わらが、天竜人を殴りつけた。

 あーあー、なんてことをしでかしてくれやがるんだか




息子を殴りつけられたことに対して、我に返った父親が狂乱のままに持っていた銃を抜いた。「おのれ!!下々の身分でよくも息子に手をかけたな!!」 目の前に迫って来ていた流れ弾をペンギンが弾き落とす。照準もクソもあったものではない。被害を被らないようにと周りにいた客たちが我先にと戸口へ、裏口へと逃げ出す。
「…面倒だなァ」気だるげに呟いたシャチにそうだなと同意を示したペンギンがまた弾を弾く。



「……ぞろぞろ集まって来たな」
「マジで噂に違わぬ変人っぷりですね、麦わらって」
「…ナマエとも交流を持ったようだしなァ?」
「え゛っ」
「…だからキャプテン、さっき不機嫌だったんですね」



暴れる麦わらの一味を捕らえようと出てきた憲兵たちを跳ね除けながら、壇上にいる人魚を救おうとしているらしい。

余計なことをしてはくれたが、中々面白い物を見せて貰った。
よもや、天竜人を殴りつける奴だったとは思わなかったものの、
麦わらが話題に事欠かない男であることは今のことで充分身に染みた



「首についた爆弾外したらすぐに逃げるぞ、軍艦と大将が来るんだ!」
えぇ!?


ならば"面白い物を見せて貰った"お礼として、今しがた手に入れた情報を分けてやるのも間違った行動ではないだろう



「海軍ならもう来てるぞ 麦わら屋」



「ん?」 憲兵を放り投げた麦わらが振り返る。「何だお前」……何だそのクマ。麦わらからの視線を受け止めたベポがえっとキョドる。他人に対して臆病な性格はここでも出たようだ


「海軍ならオークションが始まる前からずっと、この会場を取り囲んでる」
「えェ!?本当か!?」
「この諸島に"本部"の駐屯所があるからな」


ついでにつけ加えるなら、ナマエが言っていたように沖も取り囲んでいた海軍船も今頃この島に上陸を果たしている筈だ
誰を捕まえたかったのは知らないが、まさか奴らも天竜人がぶっ飛ばされる事態になるとは思わなかったんだろうな。


ニヤニヤと愉快げに笑うローに、後ろからシャチの慌てた声がした。「さっきのナマエさんからの連絡はそれだったんですね!?」そう言う大事なことは自分一人だけ聞くんじゃなくて伝達してくださいよキャプテン!! 叫んだシャチの言葉に、麦わらが反応した。
「……ナマエ? あれ、その名前どっかで…」「…あ!アイスのおっさんか!!」………。「…"アイスのおっさん"?」「ナマエさん、麦わらとな、何してたんだ…!?」訊かなければいけないことが増えただろうが、ナマエ









悪寒がした。 ナマエの身体がブルリと震えるのを見たバンダナが息を切らしながら「ど、どしたんすか!」と問うて来る。
「い、いや大丈夫だ」ロー達のいるオークション会場にまで全力疾走している今、あまり口を開いている余裕はなかった。
年だ…完全に年齢の衰えだ…とナマエは顔を暗くさせた。幾ら鍛えているとは言っても、息切れするのだけはどうしようもない。早くオークション会場にいるローたちに手を貸さないと、上陸した海軍が続々とGR1を目指している最中なのだ



「やけにバカでかい軍艦がありましたね…!あんなに大きいのに、一体何乗せてるんだか!」
「物々しい雰囲気だったしな…ローは大丈夫だろうか」
「キャプテンっすからね、大丈夫っしょ!」



わーわー! きゃあああ! うわああああ!


 だんだん喧騒が賑やかになってきた。逃げ惑う人々の波を縫いながら先を急いだ。
しかし、GR1、オークション会場はもうすぐそこな位置までやって来たところで、バンダナからの制止の声がかかる


「あ!止まって下さいナマエさん!」
「ん?」



見れば、武装した大量の海兵達が陣形を保ったまま動いていた。木々の間を駆け抜け、目指している先は同じ目的地だろう。
どうやってここを駆け抜ければ良いのか、物陰に隠れながら考えを巡らせていると背後から声がかかった。
驚いて振り返れば、合流してきた他のクルー達だった。ジェントルの姿も見える



「良かった、ここにいたか!」
「キャプテン達はまだオークション会場に?」
「ああ。 しかしこの海兵の数は尋常じゃないぞ…」
「しかも大将が来るって話だ。どいつが来るのかは定かじゃないが、誰が来たって不幸せだな」
「呑気に話してる場合じゃねぇって」



持ち寄った情報を分かち合っているクルー達の輪から外れたジェントルが「ナマエ殿、一応これをお渡ししておきます」「?」そう言って手渡して来たのはマスケット銃だった。


「交戦になるやも知れません。どうぞご自分の身を護る目的で、これをお使いください」
「…ああ、分かった。ありがとうジェントルさん」


「さて、ではキャプテンの許へ急ぎ…」号令を掛けようとしたジェントルを遮るように、横から怒号が飛び込んで来る



「いたぞ!!海賊だ!!」
「姿格好から見てハートの一味であると推測」
「討ち取れ!!」




「…やれやれ」
「やはり見つかったようですね」
「まァいいじゃねぇかナマエさん、ジェントル!暴れとこうぜ!」
「…そうだな」
「おっしゃあ!!」



血気盛んな者達が、我先にと駆け出した。



遠くの場所から、砲弾の音が聞こえる




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