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「#幼馴染」のBL小説を読む
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▼ 05

オークション開演前と言えども客の入りはご覧の通りだった。設えられた白色の椅子に等間隔で座っている客はどれも金持ち然とした様相の者ばかり。
先に席を取っていたベポの近くに腰掛けると、「遅かったねキャプテン!」どのルーキーを見てきたの? 興味津々なベポが問いかけて来る。「目に映った奴らを適当に覗いて来た」興味は然程沸かなかった。これならばナマエと別行動を取らず、同伴させておいても良かったかも知れないな、とローは椅子の上でふんぞり返りながらオークションの開幕を待つ。

ルンルンと会場の上を見ているベポは恐らくこのオークションで行われることが何なのかをよく理解していないようだ。そのベポの隣と前に座っているシャチとペンギンも「なぁ、可愛い女の子いたら買っても良いのかな」「そんなのキャプテンが許すわけないだろ」「ねえねえ、メスグマはいるの??」「いねぇよ!」「いないだろ」と嬉々として話し合っている。

ワイワイガヤガヤ 周りの人間もあれやこれやと話を交わす。その内容がローの耳にも入って来るが、聞いていて愉快なものは何1つとして入って来ない。裏社会の縮図まんまだな、と心の中でごちた。



「キャプテン、ナマエさん達の方は大丈夫っすかね?」
「……どう言う意味だ、シャチ」
「いや、他のルーキーとかに絡まれたりしてないかなーって」
「…ナマエには言い聞かせてあるから、自分からは接触してないだろうがな」



だと良いのだが、ナマエは無意識の内に全く予測していない事態を招いてしまう事があるから安心は出来ない。 よもや…とローが胸中でナマエの心配をしているのを表情で悟ったシャチが慌てて「あ、でも他の奴らも一緒にいますし大丈夫ですよ!」要らんこと言ってすみませんでした、と謝って来た。別に謝ることではないが、雑然とした邪念を持つ人間たちに囲まれているこの淀んだ空間でナマエのことを考えると、少し気分が良くなった。「…一通り見たらすぐに船に戻るぞ」「アイアイ!」佇まいを直そうとしたローに、後ろの客の入りを見ていたペンギンが耳打ちしてくる。



「………キャプテン」
「あ?」
「戸口の方で、ユースタス・キッドが此方を窺ってます」



どれ と顔を少し背けると、確かに奇抜な風体の男の軍団がこちらを見てニヤニヤと笑っている。

「………」
一気に不愉快な気分になった。 "去ね"と言う意味を込めて中指を突き返した










起きてしまったことは仕方ない! バンダナはすぐに気持ちを切り替えた。クサクサしたところでナマエがルーキーの一人と関わってしまった事実は変わらない。それに、ナマエが出会ってしまったルーキーが麦わらの男でまだ良かった。これで他のルーキーだった場合は考えないこととする。今は無事を安堵するだけで充分だ



「確かに借りがあるかもですけど、おれらが麦わらの船の事情に首を突っ込むことないっすからね!」
「……そうかもだが…」
「そんなションボリしたって駄目っすよ! 心配してたキャプテンのことを思い出してください!」
「分かった」
「そりゃ良かったです」



とにかく仲間たちと合流しましょう バンダナはナマエの前に立ち先導するように歩き出す。その後を付いて歩き出したナマエは、キョロキョロと辺りに目をやっていた。もしかしたらケイミーさんが見つかるかも知れないと希望を抱きながら。

懐から取り出した子電伝虫に連絡を入れていたバンダナははたと零す。「…そろそろオークションの開演時間だな」喧騒としている会場にいるローやシャチ達に連絡を入れてもきっと繋がらないだろう。一先ず、コーティング屋を探しているチームに電話をする。すぐに渋い声から返事が来た



『――バンダナか?』
「お、ジェントル どうだそっちは」
『それが、問題が起きた』
「問題?」
「…?」



電伝虫から聞こえた声に心配な様子を見せたナマエも近寄って受話器に集中する。
普段から重々しく喋ることに定評のあるジェントルが言った"問題"は、確かに大問題だ



『シャボンディの沖に大量の海軍船が泊まってて、船を運べなくなった』



「…な、なんでぇ…!?」
『今情報を探ってるところだ。 ――バンダナ、君の近くにナマエ殿はいらっしゃるかな?』
「…?」
「あぁ、いますよジェントルさん」


受話器をバンダナから受け取って代わる。電伝虫の表情がほっとした顔つきに変わった


『良かった。申し訳ないのですが、至急キャプテンに連絡して貰えないかと』
「俺がですか?構いませんが、どう…」
『ナマエ殿、上陸前にキャプテンから別の子電伝虫を受け取っていたと思いますが』
「…ああ、これか」



ツナギの内ポケットに仕舞っておいた子電伝虫を取り出す。今は目を閉じているコレは、シャボンディ上陸前にローから渡されたものだ。「何かあればこれを使え。受話器を取るだけですぐにおれの持ってるこっちの電伝虫に繋がるようになっているから」と言っていた。「これから掛けろ、と言うことですか」と問えばジェントルはそうですと同意した。『キャプテン達がいらっしゃるオークション会場で何か問題があったのかも知れません。なのでこの事をお伝えしてくれますか』「分かりました」電伝虫が目を閉じた。
持っていた受話器をバンダナに預け、今度はナマエが持っていた子電伝虫の受話器を取る。すぐに呼び出し音が聞こえた。確かに、すぐ繋がる設計になっているようだ。

三回目の呼び出し音の後に、ガチャリと音がした。『ナマエ?』と呼ぶローの声が耳に届く



「おぉ…本当に直ぐに繋がるんだな」
『…ああ。 で、何かあったのか? 他のルーキーに出くわしたか。ならすぐに向か…』
「あ、いや違う、大丈夫だ。麦わらの子と会っただけで他は…」
「ナマエさん!!」


それは言っちゃいけませんって!
 慌てたバンダナがナマエの口を手で塞ぐ。また、うっかりしていた。 『……麦わら?』しかしローはしっかり聞いていたらしい。電伝虫の表情がジト目に変わった。「すまない、忘れてくれ。 実は伝えたいことがあったんだ」どうにか話の筋を立て直そうとする。

先にジェントルから伝え聞いていたことをローに伝えるべく口を開こうとした途端、受話器の向こう側で物凄い爆音がした。


「ロー!?おい、ロー!!」
「キャプテン!?」


受話器の向こうのローは何も答えない。しかし電話はまだ繋がっていた。
程なくして『……悪い。ちょっと立て込んで来たから一旦切るぞ』


「ちょっと待て、何があったんだ?」
『…ナマエの言う"麦わら"がトンデモナイことをした』
「――ルフィ君が!?」
…………ルフィ、君?



――おい、どうして麦わらを君付けなんかで呼んでやがる


ローが明らかに怒気の孕んだ声を出した


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