▼ 03
一方その頃、バンダナは泣いていた
『他のルーキーたちを見に行ってくる』
『絶対にナマエに単独行動をさせるな』と
シャチ、ペンギン、ベポを引き連れてそのままオークション会場へ向かった船長たちと、居残って補給に回る組とに分かれての別行動だったのに、おい誰だよナマエさんのことちゃんと見てなかったやつ!おれだー!
勿論相手は子どもじゃない。大人のナマエだ 好奇心的な意味で迷子になったのではなく、人の波に揉まれたせいで逸れてしまっただけ
今日のシャボンディはいつになく人で溢れ返っている。ロー以外のルーキーは勿論、あちらこちらで見かける海軍、そして天竜人のお出まし………
大変だ 羅列していて分かった 危険すぎる すぐに見つけ出さないと、これは命がない
どうかどうか、ナマエさんが他のルーキーの誰かとハチ合わせてたりしませんように!
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麦わらのルフィ君に案内されて紹介されたのは、骸骨とか女の子とか蛸とかヒトデだった
「でな!この人、迷子らしーんだ!」
「おや…それは大変ですねぇ…」
「レイリーってオッサン探すついでにさ、オッサンの仲間たちも探してやろうぜ!アイス買ってくれたしな!」
「どうもすみません」
誰も彼もと言うわけではないが、比較的歓迎ムードなのが有難かった
迷いに迷っていつの間にか遊園地に来ていた時の不安感に比べれば、力になってくれる他者がいてくれる分心強い
先ほど和かに挨拶をしてくれたロングスカートを履いた女の子のケイミーさんが、ルフィ君とトニー君のアイスを眺めて傍にいたヒトデ君に声をかけている。
「ねぇパッパグ、はっちん もう私もアイス買ってい?」
「あーそうだな」
「やったあ!」
「なあ麦わら 人探しも良いがまずケイミーにもアイス買ってやってくれ」
「おういいぞ!おれももう一個食おうっと! 」
一斉にみんなが屋台に走って行く。
…蛸さんと骸骨さんは、どうやってアイスを食べるんだろうか…。
疑問が湧いたので俺も後について行くことにした。
「おや? ケイミーさんは行かないのかい?」
「あ、私はここで待ってます!歩くのちょっと大変なんで…」
「? 何か、ご病気でも…」
「あ、いやいや!大丈夫ですよ!えっと…ナマエ、さん?も遠慮せずアイス買って来ちゃってください!」
やけに強く送り出されてしまった。少し、馴れ馴れし過ぎただろうか。
「では…」と笑顔で返すと、何故か顔を赤くされた。「あ、あああの、い、イチゴ味!…欲しいって、パッパグに伝えてください…」伝言を頼まれた。勿論引き受けよう、お安い御用だ
アイスの屋台では先に駆けつけていた皆が我先にと好きなフレーバーを注文しているところだった。
アイス一つでここまでテンションを上げられるとは、麦わらの一味の皆さんも、ハートの皆とはベクトルの違う方向で明るいようだ。
しかし、麦わらの海賊団には骸骨や蛸やヒトデもいるとは…バリエーションに富んでいるのが流石と思う
「ケイミーには何味がいいかなー…」
「イチゴ味がいいと伝言を預かったんだが」
「お?そうなのか?あいつもまだまだお子様だなー全く」
「ニューそう言うなパッパグ〜三段重ね買って行ってやろうぜ〜」
「…イチゴ味オンリーの三段重ねか?それってどうなんだ…… おいケイミー!イチゴ以外に何の味……が………あれ?」
ケイミー、どこ行ったんだ?
ヒトデさんの言葉につられてさっきまで自分とケイミーさんがいた場所を振り返る
腰掛けていた筈のケイミーさんの姿はなく、その場所だけ何故か人が散漫としていた
「あ…あれ、ケイミーは?ケイミー?ケイミー!!」
「ケイミー!!!」
「な、何だ!?どうしたんだよ!」
「ケイミーさんが居ないようなんだ。さっきまでそこにいたんだが…」
「えぇー!?」
「け、ケケケイミーさんが!?」
買ったばかりのアイスを放り出して、蛸さんとヒトデさんは大声でケイミーさんの名前を叫ぶ。その表情は鬼気迫っていて、青褪めてすらいた。
「やばいどうしよう…ケイミー、人攫い屋に攫われたんだ…!!」
「……人攫い屋……?」
…もしかしてそれは、ローから気をつけるように言われた集団の名前では…
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