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大の男でも言い訳が許されるなら、ルフィとチョッパーにぶつかった男は多いに焦っていたのだ
あれほど あれほど!! シャボンディに着いたら単独行動は許さないと恋人から散々注意を受けていたにも関わらず、シャボンディの人の多さとその波に飲み込まれ、少し目を放した隙にこの様だ。恋人の姿どころか、仲間一人の姿も見えない。きっとさぞかしご立腹している頃だろう。怒っている姿がまざまざと思い浮かべられる。
男はその事に対しても冷や汗を掻き、心臓を痛めながらも、ルフィとチョッパーへの再三の謝罪を試みた。
「本当にすまない。俺の前方不注意が招いた結果だ」
「ア゛イズ〜…おれの五段重ね……」
「おれのアイス……」
「……う……」
泣いている。泣いても、目の前の男を責めても、二人の五段重ねアイスはもう既に地面に溶け込んでしまった。恨みがましく見ても、ルフィとチョッパーの気は一向に晴れない
その泣き顔と良心に負けたのは、男の方だった
「……買いなおさせてくれないかな。金なら払おう」
「本当かオッサン!!」
「やったー!!」
「………予想外の出費だ…ローに怒られるだろうな…」
怒りは上乗せか。…もう考えるのを止めよう。
「アイス屋はこっちだ!」とルフィが男の手を引いて案内をする。「アイスー!」と喜ぶ小さなチョッパーの姿に、場違いながら少し癒されてしまった。
「(……だが、この麦わら帽子の子、まさか……)」
「オッサン!わざわざ悪いなー!」
「わるいなー!」
「え、もう決めたのか!?」
「お客さん、お代金を!」
「あ、あぁ分かった」
・
・
「……喜んでもらえたかな」
「おう!ありがとな、オッサン!」
「五段重ねんまーい!」
「それは良かった。……ところで君、もしかしてモンキー・D・ルフィ君かい?」
「ん?オッサン、おれのこと知ってんのか?」
「…ああ。個人的にね、君の手配書の笑顔に何度か元気を貰ったことがあって」
「ルフィのあの写真に元気…へー!」
「そんなこと言われたの初めてだなー!ニシシッ」
うん、やっぱり裏通りの路地で見た手配書、新聞に載っていた写真と同じ笑顔だ。男は思わぬ出会いに少し笑顔を浮かべる。
「オッサン、名前なんて言うんだ?」
アイス買い直してくれたから、きっとオッサンはイイ奴だよな!
と、ルフィは屈託無く笑う。
此方の世界であまり見なかった無垢な笑顔に、男はアハハ…と照れ気味だ
「あのモンキー・D・ルフィに名を名乗る日が来るとはね……」
「おれ、おれはチョッパー!アイス、ありがとう!」
「ああいや、どういたしまして。 ――俺はナマエだ、どうぞ宜しく」
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