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「#幼馴染」のBL小説を読む
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▼ アクシデント発生

――最近不穏な噂をよく耳にする。
島の住民たちがデュバル一味の姿を見ると、寄って集まりヒソヒソと会話を交わすのだ。海軍が新規に打ち出した海賊の手配書 それの一枚の顔写真(?)が、とてもデュバルに似ているのだ。
デュバルはあの顔だ。この広い世界に二人ともない作りをしている。全てのパーツが特殊で、易々と同形の者がいていい筈がない。しかしあのデュバルはここ数年少し大人しくしていた筈だ。島の者たちから物品を取り上げるよりも、ナマエと過ごしている時間の方が何倍も有意義だと思っているのだから。もしデュバルではなく、鬱憤晴らしをしたいデュバルの部下の誰かが強奪をしていても、手配書に載るのがデュバルでは変な話になる。まさかなぁ…と思いつつも、島の住民たちは知って知らぬフリをしていた。

しかしそれは、海軍が島へやって来た時 確信へと変わる











「デュバルさん 今日は何食べようか?」
「なんでも良いなぁ〜」
「そっか〜 この季節は何食べても美味しいよね〜」



ナマエとデュバルは市場を歩いていた。6年の月日を経て少女から成長したナマエは、長く伸びた髪を風に靡かせながら、じゃあ今日はシチューにしよっか!とジャガイモ片手に微笑んでくる。ああ、そのジャガイモになれたらどれだけ幸せだろう。根本的に昔と変化も進化もしていないデュバルの脳みそはそんな事を考えている。ナマエと出会ってから少し平和な構造になった頭はただ目の前のナマエのことを考えるのに夢中で、嫌悪的な視線を投げかける周りの人間のことは、思考の外だったのだ。




「ヘ、ヘッドォ!」



空気を読んで二人の買い物に同行して来なかった部下たちの一人が、血相を変えて走ってくる。
邪魔すんな! と叫びそうになったデュバルだが、部下の顔が異様に見え怪訝に思う



「た、大変っす!!」
「だから何がだ」
「?」


ナマエも買い物をしていた手を止め傍らで首を傾げている。
そこで漸く、デュバル自身も島の住民たちも、不穏な何かの空気を感じ取った。
何だろうか、海岸の方からなにやら臭ってくるこの気配は



「か、海軍の野郎です! 海軍が、ヘッドを狙ってきて…!」
「えっ」
「な、ァ…!? ど、どうして海軍がおれを狙うんだ!」
「分かんねぇっす…! で、でも確かに海軍船が二隻、海岸に泊まってるんすよっ」



周囲の人間たちも騒々しく話始めた。
海軍が来たぞ! ど、どうして? 何でもデュバル一味を捕縛するつもりとか… デュバルたちを…?
一斉に視線が集まる。その誰もかれもの目に映っていることを悟るのは簡単すぎだ。
たとえ本人たちが"落ち着いた"としても、"そこにいると言うことの恐怖"だけは絶対に無くならない。 皆、デュバルたちがこの島からいなくなってくれたら、と思っているのだから



「海軍だァ!!!」




他の部下たちが走ってくる。
その後ろに引き連れていたのは、青と白で構成された服に身を包み、銃剣を構えた大勢の――海軍



「見つけたぞ!!」
「観念しろ!!」





「やべぇ!もう見つかったのかよ!」
「どうせ島の奴らの誰かが教えたんだ! ナマエちゃん、コッチに!」
「デュ、デュバルさん、大丈夫? あ、あんなにたくさん…」
「だ、だいじょうぶぬら ナマエちゃんは心配しなくて平気だ」



ナマエの手前強がってはみたが、逃げる足は震えている。辺境の島のチンピラ集団。それが、訓練を受けている海兵達に太刀打ち出来る可能性は低いだろう。
とにかく一旦アジトへまで戻って武器とトビウオたちを連れなければ抵抗も出来ない。
頻りに背後を振り返っているナマエの手を握りながら、デュバルは一心に走った。
――どうして自分が追われなければならないのか。気が動転している今のデュバルでは、そのことを考えられなかった




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