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▼ 涙の水溜りを歩く少女

ナマエは困り果てていた。
突然家に押し入って来た乱暴な男の人たちは、挨拶をしてくれなかった。ちゃんと挨拶をして家にやって来たデュバルと比べればなんて酷い人たちなんだろう。グルグルと乱暴に体に巻かれた縄も痛いし、手荒に担がれたせいで腹部を強く打って少し吐き気がする。

こんな状況でも、涙は流さないことにしていた。泣けば、どうにかなることじゃないとナマエは分かっていたから





「収穫はこの女のガキ一人か?他にガキはいなかったのかよ!」
「そ、それよかボス 嫌な噂を島で聞いちまったんですが…」
「な…なんだ」
「この島に、トビウオライダーズがいるとかって…」
「ト、トビウオライダーズ!?」





デュバルさんたちのことだ!
麻袋の外から聞こえてくる男たちの声に耳を澄ましていたナマエは知った名前に顔を輝かせる。
デュバルたちのことをよく知らないナマエだったが、外の男たちはその名前を聞いただけで驚いているように思う。
きっと、ものすごく強いひとたちなんだデュバルさんって。だからこの人たちこんなに怖がってるのね。
麻袋の中で、ナマエはじっと息を殺して外に集中する



「どうします!奴らのシマでおれ等が暴れてたなんて話がトビウオライダーズの耳に届いちまったら…」
「ふ、ふん ビビることはない 船はもう用意してあんだ。すぐに脱出すれば気付かれな……」







「オイゴラァそこのお前ら!!」


「え!?」
「えぇ!?」



怒声と共に現れた巨大な醜男と十数人の厳つい男たち。まさか、と声を震わす男よりも先に激しい激が飛んだ



「そこの麻袋、中身は何だ」
「あ?い、いやこれは…」
「や、山で取れた山菜で…」
「子ども一人分くらいありそうじゃねぇかぁ?」
「あ…い、いや…(お、おいまさかこのブサイクな男って…!!)」
「(トビウオのデュバ…!)」
「ちゃんと聞いちゃずらか!!その麻袋ん中身は可愛くてめんこくて花のような天使のような全ての癒すを具現化させてんように愛らすいオラのナマエちゃんじゃねぇかって聞いてるんだぬらべっちゃサッサと答えねぇか首トバすぞ!!!
「ひいいいいいいいいい!!!」
「あなたの言う天使のようなナマエちゃんかどうかは分かりませんが中身は確かに可愛い女の子です!!!!」
「お前らみてーな男がナマエちゃんの名前口にすんなずら!!チョン切んず!!」
「ひいいいいいいいい!!!」




なんだかお外はとても大変なことになってるみたい。

でもナマエは落ち着いていた。だってデュバルさんが、やっぱり助けに来てくれた!


「この子はお返ししますのでどうかお命ばかりはぁ!」
情けない声を上げた男が麻袋を地面に置いて、わき目も振らず一目散に逃げ出した。
脱兎の如く逃げる二人は絶対に逃がさない。部下に追いかけさせたデュバルは、すぐに麻袋を縛っている紐を解く…のは待てないから袋を掴んで一気に横に引き裂いた。「…デュバルさん!」の声と共に中から出てきたのは案の定、




「ナマエちゃあああああああん!!良かった、よかったぁああ!大事にならねぇで本当に良かったべっちゃあああああ!」



顔から出るもの全部出して大泣きしているデュバルの顔を一日ぶりに見て、
無事になった事実と状況を感じたナマエは、ジワジワと小さな目に涙を溜める



「………ぅ……」
「!どっか痛ェのかナマエちゃん!アイツ等やっぱり首ねっこさ捕まえて海中引き回すの刑に…!」
「ちがう……こわ、かっ…」
「!」
「こわかった……怖かったよぉ、デュバルさぁん…!」



うわあああん!




「…あり、がとう…デュバルさん……」
「…勿論だ ナマエちゃんの為ならオラは、何処へだって駆けつけるよ」
「うん……うん…!」




「ヘッドー!犯人二人ともひっ捕らえて来やしたぜー!」部下の手に繋がった縄の先ですっかり意気消沈している二人の男を見て、デュバルはナマエからは見えないところで露骨に顔を歪めた。
さあこの二人、どうしてくれようか。死は免れない方法で三日は遊んでやろうか




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