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▼ 迷子ですか

「ここ何処だ」

目の前には見渡す限りの青い海。でも多分、沖縄とかではない。そんな次元の透明度じゃない。そして今立っている場所は緑豊かな大地 踝を擽る感触にくしゃみが出そうである。

「そしてこれは何だ」

手にあるのは奇妙な形をした物体 およそ地球産ではなさそうなそれからは仄かに果物のような匂いがする。驚くことに、どうやらこれはフルーツらしい。だが食欲は湧かない。幾重もに巻かれた螺旋状の模様が怪しいのではなく、如何してこんな物を手に持っているのかは兎も角、そんな場合ではない。可笑しい話だ。学校から帰宅していた筈であるのに、何処へとやって来てしまったのか。方向音痴な性格ではない。十年来も住み慣れた土地で迷子になるわけがない。ならば此処は何処だと説明付けられる? よもや、これが"神隠し"か。なるほどそれなら初体験である。奇妙な状況に置かされたと言うのも頷ける。だが神隠しだと易々と決め付けて良いはずがない。事実に抗わなければならない。まだ、これが夢である可能性もある。出来ればそちらの方が都合が良い。覚めれば帰れるからだ。元の、場所に。家だ。ベッドで寝ている自分が目を覚ます。キッチンから母親が早く起きて学校に行きなさいと言えば百点満点だ。起きろ、起きろ、起きろ! いい加減起きやがらねぇか自分!!

「…なんだよぉ、これぇ…!」

夢ならば早く覚めろ。でないと、追いついて来る。確実に、的確に、ナマエの首を絞めるような、

現実が。


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