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▼ 04



何年掛けても、終わらない
やはりコレを1人でやるには、圧倒的に時間が掛かってしまう
しかし他に頼れる人物はいなかった。だから、独りでもやらなければならない。それが生き残りたる運命だ


何日も何日も、
兵士や城の顔馴染みだった者、城の敵側だった者達、女子ども分け隔てなく斃れている死体は、ナマエが時間を掛ければ掛けるほど、見るのも憚られるほどに腐乱していく
城壁だったモノは崩れ瓦礫となり、家屋は薙ぎ払われただの木片だ。
あちらこちらに散らばる武器の残骸を片付けるのも一苦労だ。何よりも、重かった




死体を集め重ね、その上に武器を放り込み、火を付ける。
立ち上る火が天へと昇って行くのをナマエはじっと黙して見つめていた。


そして、ナマエが次の仕事に取り掛かるか、と踵を返すと、島の周りに広がっている樹海の中に人影があったのが見えた

「……」
一応警戒しながら、深い木々の通り道をその人影が通ってくるまでじっと見つめる




現れたのは、きっかり一週間ぶりのミホークだった



少し懐かしい同居人の顔を見ると、ナマエはストンと気が抜けた



「 おぉ、お帰り」
「……あぁ、帰った」
「ふっ、なんだそりゃ」



挨拶慣れしていない者の言い方だな、とナマエは笑った


ミホークはムッとしながらも、「ほら」と手に持っていた大袋をナマエに手渡した
受け取ったナマエは、なんだ?と首を傾げる。
それにミホークは首を振って呆れたように答えた



「…約束の金だ」
「―あぁ! え、こんなに稼いでこれたのか!?一週間で!?」
「足りなかったか」
「まさか!ありがとうな、ミホーク まあ城に入れ。茶かコーヒーでも出してやろう」
「ワイン」
「…まあ夕刻だし良いか」



ワインなら地下の貯蔵庫に眠ってるのが幾つもある。そう言ってナマエは城への帰路を歩く。そのナマエの後ろに付いて行きながら、ミホークは先ほどまでナマエが立っていた場所を振り返った。火が燃えている。その下で黒く焼かれているのは、人だろう









リビングのテーブルに大袋の中身を広げる。
ざっと計算しても800万ぐらいはあるだろうか。

ナマエは眩暈がしそうだった。恥ずかしながらこんな大金を今まで見たことはあっても手にしたことがなかったのだ



「お前……凄いんだな」
「小物にしか遭えなかった。次はもう少し取って来よう」
「いや、そんな毎日必要じゃないからな?ゆっくりしても良いんだぞ」
「………ならば、暫くはゆっくりする」
「ああ。 腹は減っていないか?何か作るぞ」
「肉」
「…分かった」



なかなか、ミホークと二人上手くやって行けるような希望が持てた



「次からは日持ちする弁当も持たせるよ」
「…それは有り難いな」
「もう一回ちゃんとしておきたいんだが、好き嫌いはあるか?」
「………脂っこくて粘々したものは好まない」
「なるほどな」


それはオレもあまり好きではない。好みにズレがなくてよかった



「…ナマエは、この島から出たことはないのか」
「近隣諸島になら行くが、あまり広くは知らないな」



ナマエはこの島で生まれ、この島で育ち、この島で城に仕えたまま死ぬもんだと、信じて疑わなかった
それでも構わないかと思っていたところに、戦争
かくも人生とは無情なものだ



「…まあとにかく、約束をちゃんと守ってくれるようで嬉しいよ」
「……ふん」



これで明日からの財源は確保出来ただろうか




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