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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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▼ 02



シッケアール城を拠点にすると言って譲らないミホークと、
シッケアール城の管理を手放したくないナマエとが衝突してもきっと勝ち目は向こうにある
背中に背負う黒刀で脅せばナマエはきっと折れただろうに、
それをしないミホークにはある考えがあった。考えと言うか妥協と言うか申し出と言うべきか


「………四十手前にして、同年代の男と同棲するなんて考えたこともない…」
「衣食住の面倒を看てくれる者も探していた」
「家政婦しろってか」
「嫌なら別に構わないが」
「……オレはそこまでお人好しじゃない」



昨日城の掃除をしていて良かった…なんて考えている場合じゃないぞ
シッケアールの居間にミホークを通したはいいが、何やらとても分が悪いことを言われているような気がしてならない

なぜ鷹の目の世話を、自分がしなければいけないのか?ナマエは痛む頭を押さえてなるべく冷静に考えた



「…まぁ待て鷹の目 オレとお前は初対面の他人同士だ。そんな人間が近くにいては、お前さん自身も落ち着かないだろう」
「だが、キサマはこれからもこの城の管理をする為にこの城に住むのだろう?」
「……そうなるわな」
「同じことではないのか?」
「……………」



鷹の目と言うのは、噂や見た目に反して案外我侭だ
他人を使うことにまるで抵抗や遠慮を知らない。

大体にして、鷹の目はもしもこの島にナマエと言う男がいなければどうしていたのだろうか。1人でこの孤島の、この孤城に住むのは苦労だけしかしない



「………ならば、こうしないか鷹の目」
「なんだ」
「今、この城は見ての通りオンボロだ。何故だと思う?」
「管理の人手が足りないのではないのか」
「そ、それも的を得ているが、一番必要なのは、金なんだ」
「………家賃でも支払えと?」
「それも良いが、それでは条件として弱い。 そこで、だ」



ナマエは一旦言葉を区切り、腕組みをして耳を傾けていたミホークの方へ身を乗り出す



「オレは今後、お前の衣食住の世話をしてやろう。そしてお前は、金を稼いで来てくれ」
「? 具体的に言え」
「お前は腕に自信があるのだろう?なら、賞金首を倒して金を稼いできてくれないか。
それをオレ、まあ果てはこの城だが、金を献上してくれたらいい」
「…なるほど」
「いいギブアンドテイクだと思わないか?」



我ながら素晴らしい考えをひねり出したと思っているのだが
実は費用的な面でとても困っていたところだったのだ。この城にある財産だって限りがないワケではないのだから
そこへ腕っ節の強い鷹の目がやってきた。これはチャンスだ



「いいだろう」
「! よし 嘘ではないな?」
「冗談は好かない」
「その言葉を聞いて安心した。なら、さっき出した条件で頼んだぞ」
「ああ。おれも助かる」



「 自己紹介が遅れた。オレはナマエ。姓はない。シッケアール城の管理をしている。ガサツな見た目をしているが、家事炊事には自信がある。期待していいぞ」
「ナマエ、か。 おれの名は好きに呼べ」
「ジュラキュールは長いから、ミホークでいいか」
「…勝手にしろ」



ナマエとミホークの奇妙な同棲生活がここに始まった



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