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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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▼ 01

「……どちら様で?」
「…驚いた。人が居たのか」
「その無表情で"驚いた"だと…」



『人がいた』それは此方の台詞である。
"偉大なる航路"上に打ち棄てられたこのシッケアール城に寄り付くのは、物好きな財宝狙いか、海に迷った海賊船か、オレぐらいなものだ


肩に下げていた工具袋を抱え直し、珍客に「こっちだ」と声をかける。「…?」と疑問を返してきた男に、城へ用事があるのではないのか?と問いかける。しかし男から返ってきた返事は、今までのような財宝狙いでも雨宿りをしたいのでもなかった



「この島の城を、おれの拠点にしたい」



「……正気か?こんな薄暗くて交通の便も悪い孤島の島なんか拠点にしたってイイ事なんざ1つもないぞ」
「キサマは何者だ?何故、そんな島にいる」
「オレはクライガナ島にある城の管理人だ。城の為にオレはいるだけ」
「…管理人……なるほど」



背中に大きな物騒なモン背負ったこの男、確か見覚えがある。
ジュラキュール・ミホークだ
最近、"偉大なる航路"で起きた巨大ガレオン船分断事件や、海軍船を何隻も沈めた張本人であるとかないとか
たった一人で気の赴くままに航海をしていると聞いたが、噂はどうやら本当らしい



「…まあ、住みたいと言うのなら止めやしないが、1つだけ教えておくことがある」
「なんだ」
「多分お前は、この島でなら静かに過ごせそうだとか、寄り付かない孤島だからとか、そう言う理由でココを拠点にしたいのだと思う。が、残念だったな」
「?」
「城…シッケアール城ってんだが、そこには現在オレが住んでいる。出て行ってくれと言われても、出て行かないぞオレは」



他人と暮らすのなんて嫌がりそうな男だ
それを聞いて出て行ってくれたら有り難いのだが、



「…一先ず、案内してくれないかその城へ」
「……ついてきなー」



この男、帰る気はあまりないらしい



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