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「……………」
「…お、悪い。起こさないように気をつけたんだが」
部屋の扉が開く音がして、ペローナはのそりと布団から顔を出した。入って来たのはナマエで、ミホークに連絡を入れ終えて階下から戻ってきたのだ。「……」彼女の周りを飛んでいたホロウ達がホロホロ笑いながら部屋中を飛んでいる。その中の一匹がナマエに近付いて、体内に入り込みそうになったのを慌てて避けた
「なんだ!?」
「………とっとと寝ろよバァカ」
「も、勿論そのつもりだけど、何でネガティブにさせようとする?」
「……一応、警戒のつもりで……」
ゴースト達は未だ尚ナマエの周りをウロウロしている。おっかない警戒方法だな、と少し笑いがこみ上げてきた。同年代の女の子では、到底取りそうにないことだ。それよりも、あのペローナが一人の女の子としてそう言う危機感を抱いていることに場違いながら感心してしまった。
「まあそうなるのも無理ないな」
「むっ!」
「分かった分かった、隅っこで寝るからさ。 おやすみ」
部屋に設えられていたクローゼットの中から予備の毛布を取り出して、部屋の隅っこに蹲りナマエはさっさと眠ったようだ。やはり、想像通りえらくアッサリとしている。万が一を気にしてドキドキしていた自分が恥ずかしい奴じゃないか!とペローナは赤い顔を隠すようにもう一度布団の中に包まって目を閉じた。バカバカバカ!ともう一度毒吐いて
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ペローナが目を覚ました時、部屋にナマエの姿がなかった。時計で時間を確認すれば、今は11時30分 あのナマエに、昼前まで寝かせられていたなんて。いつも朝にちゃんと起こしてくれるのに、どうして今日はそうじゃないんだろう。 ペローナは衣服も着替えず髪も梳かさないまま、そろそろとした足取りで宿の廊下を歩いた。他の客に出くわす可能性もあったが、今のところ人の気配は感じ取れない。ナマエは何処へ行ったんだ? 階段を中ほどまで降りて、キョロキョロと一階に目を配せば、宿のオーナーをしている妙齢の女が、テーブルのところでやけに楽しそうにしている。何だ…?と思っていると、今度は奥の方から新たな人影が出てきた。ナマエだった
「な…に、してんだお前!」
「おーペローナおはよう。宿のキッチンを借りて飯を作ってたんだ」
「はあ!?なんでお前がそんなこと…」
「この宿は食事が付いてなかったからな。ほら、お前も準備して降りて来い。自信作だぞ〜」
「ちょ、ちょっと待ってて!」
確かに、本当に美味しそうな匂いがしてくる。昼頃まで眠っていたせいでお腹はとっくに空腹を訴えていたらしい。バタバタと慌しい音を立てながらペローナが部屋に戻って行くのを見送りながら、「お前さん達は兄妹か恋人かい?」と訊くオーナーに対し、ナマエは「いや、娘のような感じかな」と答えた
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