一撃 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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鋼鉄は眠りゆく


可愛いヅシモフが「組織」に帰って来なかった。
最後にあの子が送ってきた通信は救難信号だった。
「とても強いヒーローに襲われている。至急応援を」通信はここで途切れた。多分、あの子の頭部に内臓していた通信機器が破壊されたんだろう。即ちあの子の頭部が壊れたと言うことで、つまりヅシモフは破壊されてしまったのだ。
その、"ヒーロー"とやらによって。


ああ、あの子が帰って来ないのは残念だ。
それを上回るこれは、悲しみなのかも知れない。


こんなにも辛い気持ちになってしまっているのは、他の素体の中でも特にヅシモフを可愛がっていたせいだ。
私が開発した戦闘AIを搭載するに相応しい外装甲を身にまとった、強く、美しい戦闘用ロボット
ほぼ私の理想を体現してくれていた。
まだまだ未完成だが運用するには充分なデータをインプットしてあった人工知能だったのに。


私が名付けた「ヅシモフ」と言う名前と、同じく私が与えた「機神」の称号をとても気に入っていたっけ。
「我は嬉しい、マスター 機神の名に恥じぬ働きを きっと我はしてみせる!」
頼もしい限りだと私も笑っていた。
実践投入される直前にも、あの子は誇らしげに武器である剣を構えて

「必ずマスターの期待に応えよう。"最強ヒーロー キングの抹殺" これを見事に完遂させ、きっと貴方の元へ戻って来る」

どこまでも私が中心なところはいかにもロボットらしく愛らしい。

だがヅシモフは、戻って来なかったのだ。



「……泣きたいなぁ、ヅシモフ」


「組織」に従事する科学者として長いが、これほど意気消沈したのは初めてだ。

ヅシモフ 私は君に、少々入れ込みすぎていたようだよ。

好きだったんだ、我が子のような 君が。