一撃 | ナノ
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不幸エンカウント


「だからあれほど、外に出るなら俺を一緒に連れて行ってくれと言ったのに!」

「だってお前サイタマさんと修行するって言ってたから声かけ辛くって!!」


物凄いスピードで屋根から屋根を伝いながら移動しているジェノス、の、小脇に抱えられて半泣きなのが俺。これすごいやばい。万が一ジェノスが俺を落としたらと思うと、おちおち下見れない。あと前から顔面にぶつかってくる風が強いとかいうレベルじゃない。痛い。


「…っ!修行が終わるまで待っていればよかっただろう!」


普段のジェノスからは考えられないくらい怒気を孕んだ口調で責められている。
 が、しかしこうなったことの責任は全て俺にある。

「職探しがんばる」とジェノスと約束した手前、親友の脛を齧りながらいつまでもプー太郎でいるのも我慢ならなかったし、熱情がある内に新しい職を探そうと、宛てもないのにうっかり家の外に単身出て行ったのが運の尽きだった。



自宅を出て五分で怪人とエンカウントとか、正直Z市の治安舐めてた。



「……あの時まじでジェノスが駆けつけて来てくれてなかったら死んでたかと思うと、なんか……もう…ゴメンなってなるわ…」
「当たり前だ。ナマエの危機には、何をかなぐり捨ててでも駆けつけてみせる!」


うわ親友がかっこよすぎてつらい。











その後、廃アパートにまで無事帰ってこられた喜びと、さっきあったジェノスが見事に怪人をボコボコにした功績をもっと世(サイタマ)に広めるべく、懇切丁寧に話して聞かせると、

「んー……じゃあとりあえずさー、"むなげや"でバイトでもしてみれば?」

「むなげや?」

「郵便受けにアルバイト募集のチラシが入ってたんだよ。『自給750円、8時間勤務、レジ打ち・品出しが主な仕事、怪人保険はありません』」
「"怪人保険"?」
「通勤途中、就業中、帰宅途中に怪人に襲われて死んでもうちは一切責任は負いませんよって意味だな」
「ひえっ」



「大丈夫だナマエ 行きも帰りも俺が送るから問題はない」

「ほらそうやってジェノスが俺を甘やかす!!!」

「何ならお使いに行ったときにむなげや付近の巡回もしておけば……」

「モンペみたいだなお前……」