一撃 | ナノ
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
ままならぬ職探し


嫌な音がしてから、背中が軋んだ。やはり何も敷いていない床で眠るのはまずかった。フローリングの冷たさを直に感じていたせいで若干寒くもある。
充電器に刺しっぱなしにしていた携帯のディスプレイには、「08:35」の文字。昨日、何の荷物も持たない引越し作業を終えて疲れて眠ってから8時間経っている。以前まで住んでいたマンションにいれば外からは車が走る音や人の足音や話し声やらが聞こえて来ていたけど、ここは何も聞こえてこない。窓の外には、車はおろか人っ子一人通っていなかった。
――短くインターホンが鳴った。



「起きているか、ナマエ」



相変わらず、陽の光に煌いて眩しい金髪のジェノスが立っていた。



「おーう。おはようジェノス」
「…おはよう。よく眠れ……ては、いないようだな」
「おーもうあっちこちバッキバキだぜ…。そう言うジェノスはやけにパッチリしてるな」
「朝はいつも鍛錬の為に走りこみをしている」
「…すげー」
「いや、べつに、すごくなんて」



ジェノスが開けて入って来たドアの隙間から入り込んで来た朝の冷気だけで身を震わせている俺とは大違いな生活スタイルだった。


ナマエの素直な言葉に少し照れた様子のジェノスは口早に「食べるか?」と言って、手に提げていた"むなげや"のビニール袋を見せる。中には三個のおにぎりと惣菜パックが入っていた。



「…俺、コロッケ食べたい気分だったってお前に言ってあったっけ」
「…だろうと思ってたんだ」
「さっすがジェノス!」
「当面の世話は看ると約束した。…職探し、頑張れ」
「ああ、サンキュ!」


親友は約束通り、きっちりパトロンしてくれるらしい。期待に添えるよう、頑張らねばなるまい。
買ってきてくれた食品を胃に詰め込み、気持ちを切り替える。

そしてサイタマさんと朝食にするため一度部屋に戻るというジェノスについて俺もお隣にお邪魔することに。俺もサイタマさんに訊きたいことがあった。この辺のことに詳しかったら有難いんだけど。









「…この辺でいい仕事口?そんなのあったら俺が教えてほしいぐらいだバカヤロー」
「デスヨネー」


怒らせてしまった。