一撃 | ナノ
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
うっかりしてる。


!64万企画小説作品


----------



俺は今、はっきり言ってとても忙しいんだ。
大学受験を冬に控え、来る日も勉強、朝陽が昇るまで勉強、歩いてる時も飯を食ってるときも勉強をやっていて、頭の出来もさほど良くない俺だが勉強を頑張れば合格も夢じゃないと担任が言っていたから死に物狂いで頑張ってるわけで、勉強以外のことに時間を費やしている余裕はないわけである。

なのに、だ。
スマートホンに送られてきたメールの内容を見て、思わずスマホを握りつぶしたくなった。


「もう保育園生じゃねぇんだから一々俺を呼び出すんじゃねぇー!!」

「あ、お迎えご苦労さまー」

「ご苦労様、じゃねぇー!!」


叫べば叫ぶほど、さっき覚えていた英単語が10個ずつ抜け落ちて行っている気がする。



毎週月曜日。
またこの日が来てしまったと項垂れた。
俺は週始めにいつも、"こいつ"の小学校にまでお出迎えに来なくてはいけない。

小学生のくせして一端のヒーローなんてのをやっている"こいつ"のヒーローネームは「童帝」
ヒーロー協会からの悪質なイジメなんじゃねぇ?と思えるほど下ネタ感満載の名前を付けられている"こいつ"とは、親同士が友人、住んでいる家が隣同士の、所謂「幼馴染」な関係なのだが


「あのな、俺がお前を迎えに行ってやってたのは、お前が、"いたいけな保育園生"で、お前ん家のオバサンとおじさんが、月曜日は仕事の帰りが遅いから代わりに迎えに行ってやってただけだ。今のお前みたいなこまっしゃくれたガキなら一人で帰れる。と言うか月曜以外の日は普通に一人で下校してんの知ってんだからな!!」

人が話してる最中に新しい飴を取り出すな!

「えーヤダよー ボク、ナマエが迎えに来てくれる月曜日来るのすごい楽しみなのにー」

「その棒読み加減やめろ……ハァア…」


頭が重いし痛い。
こんな調子じゃ、大学合格の道が遠のいてしまわないだろうか。


溜息を吐いた俺を見て楽しそうに笑っていた"童帝"様が「じゃあね」と提案を持ち出す。


「いざとなったら絶対にバレないカンニング用装置開発してあげるから」

「マジか……!? って、イカンイカンそんなこと!フェアじゃねぇ!」

「…もー、石頭なとこ本当変わらないなぁ、ナマエは」

「年上を呼び捨てにすんな」

「ナマエおにーちゃんっ」

「げ、サブイボ」

「失礼すぎ」


まあ、何だかんだと言っても、結局こうして一緒に帰るしかない。
ただ単に帰る方角が一緒だから。それ以外に理由はないぞ。


「あーあ もうナマエも大学生になるんだね」

しみじみ。なんでそんな感慨深そうに言うんだ

「誰かさんが邪魔したりせずに受かればな」

「日本にも飛び級制度あれば良いのに。そしたらボク、すぐにでもナマエと同じ大学に入るのになー」


嫌味か。いや事実としてこいつにならそれが出来る。全く羨ましいぐらい賢い頭脳を持っているんだから。小学校の教科書の内容なんて一年生の時に全て覚えてしまっているから、そのランドセルの中には糖分補給用のお菓子と、怪人と戦う時に使う武器しか入ってないことも知っている。


「やめろ。俺の面子が立たねぇ」

「えー?ナマエだってボクと同じ学校通ってみたいんじゃないの?」

「あのな、誰が……」


「ボクは四六時中ナマエと一緒にいたいけどなー」



騙されるな俺、こいつの笑顔に。
その表情の中に純真なところなんてないんだから。



「……今日もうちで飯食って行くか?」

「行くー!」


…あー、やっぱ俺って こう言うところがバカなんだよなぁ、きっと。