一撃 | ナノ
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雨降って、花開く


次に俺が目を覚ましたのは市内にある病院の一室でだった。

仰々しく巻かれた頭部の包帯と、見舞いの品と思しき花束に埋もれ、寝台にうつ伏せになって目を閉じているジェノスを見て、何故いま自分がここにおり、こんな状況になっているのかを思い出した。
正直すぐ横にジェノスがいるのを見た時は硬直したが、ぼーっとしていた頭がどんどんと覚醒して行き、経緯を思い返せるぐらいの余裕が生まれた。

確か 俺は怪獣の手によって壁に強く打ち付けられて、血をたくさん吐いて意識が朦朧として、それから多分、ずっと気を失ってたのだろう。
ならば、あの怪獣はどうなった?
気を失う前に見たジェノスの姿は両腕欠損、全身の皮膚が溶け落ち、骨組みがむき出し状態と言う悲惨な物だったが、現在、俺のいるベッドの隣に椅子を運び腰掛け、うつ伏せになって目を閉じている――寝ているのだろうか?――ジェノスの姿は"正常な姿"のジェノスだった。
俺が寝ている間に修復したんだろうか? だとすれば今は、あれから何日が経過しているのだろう。

この病室に自分の手荷物が運び込まれていないかと視線を彷徨わせる。
すると、ちょうど病室の壁にかかっていた電子時計が目に付いた。時刻と一緒に年月日も表示されてあるタイプのものだ。それに映っていた日付を見て、思わず驚愕の声を上げてしまう。


「……2日、経ってやがる………」


「…… …ナマエ…?」

「!! お、おう。起きたんか」



 しまった。ジェノスを起こしてしまった。
いや別に嫌なわけではないんだが色々とまだ心の準備というか訊きたいことも話したいこともたくさんあってどれから消化すればいいのか分からないだけであって頭いたい



「……それを言うならナマエの方だろう?」

「そ、それもそうだな! いやぁお陰様でこうやって無事に今日も目を覚ますことが出来たぜ!はっはっは!」


ジェノスの笑った顔を見てなんかドキっとしてしまった。なんなんだ俺は
照れ隠しに高笑いしてみたが怪訝な顔されてしまっただろうが。違うんだって、ジェノスとしたいのはこんなやり取りじゃなくってだなぁ、



「………なんだか、安心した」

「…ん? 安心?」
「ああ。 ナマエが昔と変わらずにいてくれて、安心しているんだ」
「ジェノス…… ……まあな!ナマエ様は昔とちっとも変わってねーんだぞー……… って、え? 昔と? って、あれ、ジェノスおまえ、まさか俺のこと覚え「本当にすまなかった!!」


――土下座されてるんですけど?



「あの時、ナマエは俺に会いに来てくれたのに、思い出すのが遅くなったせいでナマエを傷つけるような言動を取ってしまって、俺は、俺は…!」
「う、うおおおおい!いい!いいって!!そんなことしなくていいから!ほら、頭を上げよ!面を見せろ!ああ何でもいいから土下座はやめろ!」
「ナマエ……」
「そのしょぼくれた顔もやめなさい!」


未だ戸惑ったような様子でジェノスは椅子に座り直したが、その顔はまだ「申し訳なさ」を感じてる顔だった。

ジェノスの方こそ変わっていないじゃないか。
変なところが律儀で真面目で、責任感が強くてすぐにしょぼくれる。他人のことを慮り過ぎで、気の利いたことを言えない不器用なところも



「――バッカだなぁジェノスは!」
「!」
「んな仰々しく謝んなくたっていいって」
「し、しかし」


「 俺たち、親友だろ?」



"鳩が豆鉄砲食らったような顔"をしていたジェノスが、じわじわと口元から綻んでいく笑顔を浮かべた。
すっかりぎこちなくなってしまった表情筋を動かし、精一杯に嬉しさを俺に伝えてくれている。

「ありが、とう ナマエ」

何に対してのお礼だろうか。
生憎、俺はありがとうを言われた側なので、言った側の真意のほどは汲み取れない。

だけど今のジェノスを見て、「ああ、会いに来てよかったな」と思えた。







生きていてくれて、ありがとう ジェノス