一撃 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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俺の後悔的なものと、


その日はどうやって会社に出勤したのか覚えていなかった。
あまりのショックで朝からぼぅっとしていたのは覚えてる。夢にはジェノスが出てきたっけ。昨日と全く同じような顔で俺のことを見返してきていた。
「何か言えよ」と思ったがそれは無理なお願いだったろう。
だって"俺"の方があいつに何も言えなかったんだから。




「はぁぁああ………」
「どしたナマエ 元気ないな」
「あー…先輩…おはようございますー……」
「編集長から任されたヒーロー・ジェノスの密着記事でなんか困ったことでもあるのか?」

正しくどんぴしゃである。さすがは先輩だ。

「……それ、今から編集長に辞退とかって申し出れますかね…」
「はあ?密着やんねぇのか? 確かにヒーローについて回ってると怪人なんかに狙われてまあまあ命の危機に瀕したりはするがボーナスだって弾むのに…」
「いや…そう言うことじゃなくて…」


駄目だ言えるわけがない。『そのヒーローと顔を合わせるのが恥ずかしいので嫌です』なんて、社会人としてあるまじき理由になってしまう。
多少の嫌な仕事も我慢してやる覚悟は就職した時から持っていたが、こんなケースは想定していなかったんだ仕方ないだろう。

そもそもネットで調べた限りでだとジェノスは今までも全てのインタビューやメディアへの露出を嫌がって拒否していると出た。ならば尚更だ。俺が密着記事を書かせてくれと突撃しても門前払いが関の山である。何故、何度もあいつの前で恥を掻く羽目にならなければならないんだ。全力で願い下げだそんなの。
覚えられていないたった一人の友人相手に、俺はそんな事できないししたくない。
だがそれを、どうやって会社の人たちに言えば良いのかも分からない。だめ、もう色々と詰んだ。布団虫になりたい



「…ぶっさいくな顔してるな」
「………ほっといてください……」
「まあ編集長に相談するのはもうちっと考えてから言うようにしろ。俺もナマエの書く記事は結構好きだぜ。若いのに大したもんだって、他の奴らも買ってるほどだ」
「……先輩は俺を泣かせるつもりっすか!!」
「励ましてるつもりだ。 気分転換に外にでも出て、ネタを拾って来い。記者にはそれが一番効果的だ」


ポンと背中を押される。まったく俺には勿体無いくらい良い人ばっかりな職場で、やっぱり少し泣きそうになってしまった。だけど何とか出てこようとしてるそれを押し留め、カバンを持ち、「じゃあちょっくら一っ走りしてきます!」他の皆さんにも聞こえる声で宣言し、担当部署を飛び出した。












――あと5分、俺が会社を飛び出すのが遅ければ、外出するのを止めていた。

ちょうど俺が向かった市街地の方で怪獣が出没したとのニュースが入り、市民全員が大騒ぎを起こすという事件が発生した。