一撃 | ナノ
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友人の態度がツレない


映像で見た姿と同じ。
金髪黒目に四肢が機械化されたサイボーグ。

「ほ、本当にジェ、ジェノスか…! 会いたかっ」

「――誰だお前は?」
「………………な、」

なんだと…?

「ちょ、ちょっと待て!俺の顔をよく見てみろ、そしたら分かるだろ?な?見覚えあるだろって」
「…………いや」
「なにぃ…!?  ……………ま、まぁそうだわな。あれから四年も経つんだ、俺もそれなりに成長したし顔とかも男前になったし、変わってるから分かんねぇよな」


いじわるをして悪かった。そうだよな、最初からすぐに名前を名乗ってれば良かったんだ。そうすれば余計な時間をかけることなくジェノスに思い出してもらっていただろう。俺はことさらゆっくりと、区切るように自分の名前を伝えた。「俺だ、ナマエだよ」


「…………、………」

「………マジ、か……」


ダメだ反応がない。「さっきから何言ってんだこいつ」みたいな顔されてる。万事休す。

会社で恥ずかしい思いをして、ヒーロー協会の方々の心証悪くさせたり、怪物に掴まって少し死の危険を味わってまで会いに来た友人は俺のことを全く覚えてくれちゃいなかった。俺自身に言い聞かせられる励ましならある。人間は人の声から順々に人を忘れていくらしい。ジェノスは俺の名前と、姿と、俺といた中学時代のことをもう覚える気がなくなったようだ。それに、俺がこの四年間で変わったのは見た目だけだが、ジェノスは見た目はおろか環境も生活も生き方も何もかも変えてしまったんだろう。狂サイボーグを追う為、復讐に生きる毎日に過去の友人のことなんか必要ないと判断したのかも知れない。

四年ぶりに見るジェノスは、すかした顔で思い悩む俺をじっと見ている。その隣で、ジェノスに「先生」と呼ばれていたハゲつるピッカヒーローがこれまた無言で俺たちのやり取りをぼーっと見ていた。

この感情はなんだろうか。「落胆」かも知れないし、「寂寥」かも知れない。
すっかりジェノスと喜びと感動の再会を果たせると思い込んでいたハッピーな頭に喝を入れたい。
久しぶりに会ったら何から話そうかなんて考えてたなんて、全くもってバカバカしい。
お気楽に新聞記者なんぞをやっている俺なんかよりも、毎日命懸けなヒーローをやっているジェノスとでは、"こんなもん"なんだ。




「……ちくしょうこのバカジェノスめ!なんて薄情者なんだお前は!俺が受けたあらゆる精神ダメージとか、お前から食らったセンチメンタルな部分とかが今後癒せねぇ傷になったらどうしてくれる!ってああそうだなお前は俺のことを知らない奴だと思ってんだから俺たちは他人同士か!ヒャア!いいぜお前がそう言うなら俺ももうお前のことを友人だとか思ったりしねぇわ!これからも恙無くお前たちヒーローの活躍を民衆にお届けさせて貰うぜ!あばよこのサイボーグ王子かっこわらいかっことじ! あ、そちらのヒーローさんは助けてくれて本当にありがとうございまし、た!」


捨て台詞を残して一目散にその場から逃げ出した。
いてもたっても居られなかったと言うか、あの場に居続けることが恥ずかしくてたまらなく思えた。

折角ジェノスと会えたがあんな態度だった、ことはもう恨むまい。
元々、俺的には、あいつが今も生きてくれていたことが何よりもの朗報なんだから。














「…………」
「…、……」


そして後に残ったサイタマは、何となく気付けていた弟子の妙な様子に疑問を持ち始めていた。

先ほど、僅かな動きだったが、去っていた男が「俺だ、ナマエだよ」と名乗った時にジェノスの白い瞳孔がピクリと反応を見せたのだ。
それをたまたま目にしていたサイタマは未だ口を開かずにいる弟子に「…あー、ジェノス?」と肩を叩いて声をかける。


「お前、本当にさっきの奴 知り合いじゃないのか?」
「…………、に……?…」
「は? 何言っ…」


「本当に、ナマエ…!?」


急にジェノスの身体が戦慄き出す。
ガタガタと腕を震わせ、もういない人がいたところへ向けて幻覚を見ているかのように機械の手を伸ばした。その様子にサイタマも思わず心配になる。


「お、おいジェノ…」

「ナマエ、ナマエ、本当にお前なのかナマエ ああ四年ぶりだなお前が転校して行ってもうそんなに経つのか元気そうで何よりだ最初誰か分からなくてすまない言い訳になるがその、凛々しくなっていたからデータと照合できなかったんだでもどうしてお前がここにいるんだ?今は何をやっているんだ?それにどうして俺に…会いに来てくれたんだ?理由を聞かせてほしいでないと色々推測を立ててしまって、俺に都合の良いようにしか解釈しなくなるか………ん? ナマエがいない!?


「……いやお前、バカ?」