一撃 | ナノ
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ヒーローと出会う


「俺か? 俺はー…趣味でヒーローやってるものだ」

「あ、あぁそうなんデスカ……」



ふおおおおおおおミスった!そうだよ、ジェノス以外のヒーローが来る可能性をちっとも考慮していなかった!うわあああジェノスに会いたい、会わなきゃ、って思ってばっかりだったせいで他のことを検討すらしてなかったぞおいどうしよう、ここに来て計画に破綻が!完璧だった筈の俺のプランが!


『趣味でヒーローだぁあ?なにふざけたこと抜かしてやがる!』
「やっぱそう言われるんだよなぁ…なんでだぁ?」


ああでもそうだ、(一応)怪人に捕まっていた俺を助ける為にこの人は駆けつけてくれたんだよな、ガッカリしてる場合じゃない、喜ぶべきところだ。


「まあスーパー帰りに見かけただけだから、格好とかTシャツにジーパンだしな」


…駆けつけてくれたわけではなかったみたいだ。買い物帰りに見つけたから来てみたって、あなた。なかなか俺の思ってたヒーロー像と一致しないなぁ…。
「ぐえっ!」
俺を腕の中に抱きしめてくれていた怪人が急に首を掴んで来た。えちょ、苦しい!


『ふん、いかにも弱そうな奴だな。おい!この人質がどうなってもいいのか?』


うわいきなり怪人ぽくなりやがったぞこのナイーブ野郎。
鋏みたいな手が俺の首を挟んで来て喉を圧迫してくる。気道が確保できない。苦しい。甘く見てて悪かった、とかもう謝れない。俺は震える手で助けを求めるべく、いまいち頼りにならなそうだがこの人に縋るしかない、と「た、たす、くだ」切れ切れに伝えた。ハゲつるピッカさんは依然としてぼんやりしていた。あ、やる気なさそう


「……」
『ゲハハハ!おらおら、大人しくし…ゲあッ』
「…え」


突然、怪人のどてっぱらに風穴が開いた。
腹部丸ごと抉り取られたみたいに穴が開いてる。
怪人は驚きに目を真ん丸くさせて、血反吐を吐いて前に倒れこむ。
その拍子に鋏の拘束の力が緩まった俺は一緒になって地面に投げ出された。


「いつつつ…」
「大丈夫かー?」
「う、は、はい…なんとか……」


手を差し伸べてくれた。案外いい人なのかも知れない。
ようよう起き上がって、改めてお礼を言う。軽率だった自分の行動を内心で反省して、口ではたくさん「ありがとう」を伝えた。でもハゲつるピッカさんは興味なさそうで「別にいーよ」としか言ってくれない。お礼を言われるのが理解出来ない、みたいな顔してないか?ヒーローなんだよな?この人。変なの



「…この辺は一応、怪人警戒区とかってのになってんだけど、会社員ぽい人がどうしてうろついてたんだ?」
「ちょっと人を探してたんです」
「ふーん…?」
「あ、貴方ヒーロー協会に所属してます?」
「ん?まあ、一応」
「じゃあ、ジェノス、って奴のこと何か知りませんか?」
「……ジェノス?」
「えーと見た目金髪で、黒目がちで、腕とか足とかがサイボーグ化してて……」

「先生!ここにいたんですね」

「あんな感じか?」
「ええそうですちょうどあんな感じの人………え」

「? 先生、こちらの方は……」

「ジェノス!!!」