一撃 | ナノ
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
友人が生きてたので再会を試みる


「職場で鼻汁を噴出した男」として有名になってしまった俺
だがそんなのはどうでもいいことだ。いやちょっとはどうでもよくなくないけど、可及的速やかに問題視しなくちゃいけない問題は他にあるのである。

無口でクールなイケメンヒーロー?
淡い金髪の下で寂しそうにしている黒目が儚げな印象を与えてる?
メディアへの露出を嫌ってどんなインタビューにも応じないサイボーグ王子?

一部ピンと来ない箇所もあるが大方のポイントは特徴として当て嵌まっている。
隠し撮りされていたVTRに映っていた姿が何やらロボットじみていたがきっと色々あったんだ、そうに決まってる。
狂ったサイボーグに破壊された街で生き残ったジェノスなんだ、きっとボロボロになった身体では生きられなくなっていたところを通りがかった天才科学者と出会ったことで生き延びる為に身体をサイボーグ化させヒーローになって街を襲ったサイボーグに復讐しようと考えてるとか、多分その辺だろ!



「すいませぇええええん!!ヒーロー日報会社の者なんですがぁあああ!!」
『うるせー!玄関ホールで一体なんだお前は!!』
「ヒーロー日報に勤めているナマエと言いますー!とあるヒーローのことについてお尋ねしたいことがありましてー!!」
『周りに埋め込んでる集音機があるからんな大声出さなくてもちゃんと通信室に届いてんだって!』
「あ、そうなの?」


いやぁだってヒーロー協会に直接足を運ぶとかしたこと無かったもんで。
平素ならば平社員らしく土下座の一つや二つ決めて謝るところだが生憎今の俺には暇な時間なんて無い。ああもうすったもんだしてないで早くヒーロー・ジェノスの個人情報まるっと教えなさいよ! 住所だろ! 住所だろ! あとそれから住所に、住所な! なんかバカ野郎って言われたがめげんぞ俺は!ええい早くジェノスの今いる場所を教えろ!







数十分それで粘ってみたが「個人情報がいかに大切なものであるか云々知った上で君はそんな非常識なこと云々」言われて教えて貰えなかったので、俺は更にあることを考えた。これはジェノスがヒーローをやっていることを逆手に取った素晴らしいアイデアである。多少俺にリスクは付くが、ここはあらゆるモノを信じて実行するしかない。大丈夫だ、俺。多分死なぬ。たぶんな





『ゲッヘッヘおらおら人間どもォ!怯え!惑え!ワハハハ…』

「ちょっとそこの怪人さーん!俺を捕らえてくれないかー!!」

『ハハハ…エ゛ェッ!? な、なんだお前!!』


その辺で暴れていた怪人(比較的メジャーな見た目)に突撃してみる。勿論物理的にでなく、アピール的な意味で。
両手がヤドカリの手みたいになってるが、あれで挟まれると痛いかな。絶対痛いな。だから


「こう、優しく腕を交差して、胸元で俺を抱きしめる形でしばらく拘束してくれないか!」

『な、なにこの人間!新手のタイプすぎてオレついてけない!』

「目当てのヒーローが来るまででいいから!何なら人質っぽく『きゃーたすけてー』って叫んだりするから!」

『怖い!こんな人間知らない!おかあちゃーん!』

「チッ、見た目に反して心がナイーブすぎるぞ怪人!その両手の鋏は飾りか!もっと堂々としてればいいだろ、自分に自信持てよ!せっかく強そうなんだから!」

『そ、そうか…?オレ、強そうに見える?』

「見える!」

『そ、そうか…! 分かった、こうしてればいいんだな人間!』

「そう!ありがとな!お前の胸、ちょっと温かくて気持ちいいぞ!」

『ゲヘヘヘ……』


笑い方気持ち悪っ。
でもまあいい、これで当初の問題はクリアだ。思ったより拘束感が苦しくなくて良い。
あとは怪人の騒ぎを聞いたジェノスがあっちからやって来てくれればいいんだが…




「おいそこのお前ー その人を放せー」


『ム!? なんだお前は!誰だ!?』

「よし来た……って、」



なんだこのハゲつるピッカは!